昭和75年(2000年)度を目標とした鉄道計画
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作図:伊奈利夫 |
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毎日の通勤・通学、お疲れさまです。朝夕の気ちがいじみたラッシュ、本当にうんざりさせられますね。
混雑、あるいは駅までの不便など、交通に関する不満は、私たちが常日頃から強く感じているものです。
しかしながら、こうした不満を解決すべく過去に、あるいは現在施されている方策――例えば列車の増発や長編成化、接続バスの路線新設や延伸・増便等――では必ずしも過密人口をさばききれず、また今後見込まれる人口増加に対処することも困難かと思われます。
東横線周辺地域においてこの問題を考えるとき、最も有効であると見られる方策は鉄道路線の新設・延伸・複々線化等の計画でしょう。
このような計画は運輸政策審議会(運輸大臣の諮問機関)の「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」についての答申によって明らかにされ、既存路線の混雑緩和や近郊ニュータウンの足の確保に、大いに期待されているものです。
今回は、答申の内容から、東横線周辺の鉄道整備計画(昭和75年目標)についてお知らせします。
A. 東横線の複々線化
私たちにとっては最も馴染み深い東横線。多摩川園(現多摩川)・大倉山間の複々線化が計画されています。
B. 目蒲線の改良
目黒・多摩川園間に大幅な改良が加えられる計画です。実現時は列車編成も現在の3輌から8輌に増え、(日経新聞の記事による)、施設や運行区間も一新されて全く様相の異なった路線となりそうです。
C. 東京7号線の新設
目黒→清正公前→永田町→市ヶ谷→駒込→王子→岩淵町→鳩ヶ谷→浦和市東部と結ふ地下鉄。目黒で目蒲線に、多摩川園駅からは東横線に乗り入れる計画です。
D. 東京6号線の建設
西高島平・三田間で開業中の都営三田線を清正公前まで延伸、7号線を通じて目蒲線・東横線に乗り入れる計画です。
☆以上のA〜Dが実現すると、浦和市東部・大倉山間、西高島平・大倉山間の相互直通運転も可能になるわけで、まさに第2の東横線≠ニして一大動脈となるに違いありません。
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E. 相鉄線と臨海部を結ぶ路線新設
二俣川(相鉄線)→鶴ヶ峰(相鉄線)→上菅田町→新横浜→大倉山、新横浜→下末吉→川崎→臨海部方面を結ぶ路線の新設
F. 横浜4号線の新設等
日吉・高田町・港北ニュータウン・横浜線方面を結ぶ計画です。また、日吉・鶴見間には新交通システム等の導入も検討されています。
G. 横浜1・3号線の建設
舞岡・新横浜間の市営地下鉄を港北ニュータウン経由であざみ野(田園都市線)へ、戸塚経由で湘南台(小田急江ノ島線)へと双方向に延伸する計画です。
H. みなとみらい21線と横浜環状線の 新設
東神奈川→みなとみらい21地区→元町付近→本牧→根岸(以上みなとみらい21線)→上大岡→東戸塚→鶴ヶ峰の路線新設計画です。
I. 東京11号線の延伸
田園都市線・新玉川線と直通運転中の半蔵門線を、半蔵門→九段下→神保町→大手町→白河→錦糸町→押上→四つ木→金町→松戸と延伸する計画です。
J. 東京13号線の建設等
渋谷→神宮前→代々木→新宿→西早稲田→高田→東池袋→池袋→小竹向原の路線を新設し、その先は現在の有楽町線を流用、成増・和光市間を新設、東武東上線和光市・志木間を複々線化して直通運転を行う計画です(東池袋・小竹向原間は有楽町線と併走)
K. 山手貨物線の旅客線化
山手線と併走する貨物線、池袋・大崎間を旅客線化する計画です。
L. 武蔵野南線の旅客線化
南武線とほぼ並行して通じている貨物線を利用し、京葉線(新設)方面→(武蔵野線)府中本町→武蔵小杉→新川崎→川崎間を旅客営業路線として直通させる計画です。
東横線周辺における鉄道整備計画を簡単に紹介しましたが、これらは必すしも実現するとは限りません。輸送需要の動向や採算性、さらに土地収用・建設費・車輌の調達・車庫・環境問題における困難に代表されるような対立条件を熟慮したうえで、その計画の実現が決定されるわけですから、まさに前途多難と言えるでしょう。
先のA−D(読売新聞の記事では第2東横線≠ニ呼んでいました)の計画は私たちにとって最も興味深いものだと思います。これについて東京急行電鉄広報室に伺ったところ、「なにぶん15年後を目標とする計画ですから、実現させるか否か、また具体的にはどのように行うか、といった結論には及んでいません」としながらも「責任ある公共交通機関の事業者として、計画は慎重に検討しています」とのお答えでした。
ちなみに同社では東横線の混雑緩和対策として、昭和61年を目標に車輌の大型(全長20m)8輌化を急行と同様に各停でも実施(現在は18m8輌、20m7及び6輌)するそうです。
先の計画によって祐天寺・中目黒間(最混雑区間)の最大混雑率(昭和55年度)は209%から162%に緩和される見込みとのこと、実現が切に望まれます。
取材・文:一色隆徳(祐天寺 学生)
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