「ホットライン」のイラスト、いつも愉快で楽しいですね。ツボを心得たイラストは、川崎・元住吉在住の石野英夫さんによるものですが、その石野さんが先日、「うちの娘が住んでいる所は、役所に行くにも不便でねぇ…」と、ボソッと話されていました。
ホットライン取材班≠ヘ、こういうつぶやきは、絶対に聞き逃がしません。すかさず、石野さんの娘さん、港北区すみれが丘在住、主婦・石川陽子さんに伺ってみました。
港北区すみれが丘は、下の地図をご覧のとおり、横浜市緑区、川崎市宮前区にはさまれた地域で、港北区役所のある大倉山まで、1時間ほどかかるそうです。
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作図:伊奈利夫 |
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「バス、電車3本を乗り継いでですから、1時間以上に手間がかかります。車を買うときに必要な印鑑登録証明一つをとるにしても、大倉山まで行かなければなりません。車で行けば、近いのかもしれませんが‥。近所の人の話では、子どもの予防注射は、緑区の山内支所で打ってもらっているそうですが、役所での手続きなども近くでできれば、いいのですが…‥」
そこで、今回の ホットライン≠ナは港北区における行政サービスのあり方について調べることにしました。
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港北区と他の地域との比較
…港北区:28万人強、渋谷区:2万人弱…
港北区の問題に移る前に、まず、行政サービス機関――ここでは、市役所あるいは区役所及びそれらの業務を分掌する支所・出張所をさす――の各行政区域での機構の違いについて見てみましょう。下の表1をご覧ください。かなり、地域によって違いがあることがおわかりと思います。中でも目立つのが、都内と神奈川県内との違いです。
この違いを数的に見てみましょう。単純ですが、人口を行政サービス機関の数で割ってみたものが右上の表2です。
つまり、渋谷区では、2万人弱について、1つの行政サービス機関なのに対し、港北区では28万人強に1つの機関しかないのです。
港北区は人口急増中とは言え、現状では、とても充分な行政サービスを区民が受けられるとは思えません。
港北区が分区される
ところが、まさに、その港北区が分区されるという話を小耳にはさんだのです。そこで横浜市総務局行区調査室に飛び込み、状況を伺ってきました。
以下は、調査室副主幹の藤原照男さんにいただいた、「横浜市行政区の再編成に関する答申」(昭和59年6月7日・横浜市行政区審議会)によります。
「答申」では、第一に、港北区は単独で分区が検討されるのではなくして、緑区と一体的に考えられています。(昭和44年に緑区は港北区から分離独立)なぜかと言えば、両区にまたがり「将来少なくとも、一行政区を行政するものと考えられる」(答申より引用。港北ニュータウンがあるからです)。
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表2 一つの行政サービス機関当たりの人口
(昭和60年2月現在)
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すなわち、現在の港北区は、港北ニュータウン地域と、その他地域に分割されることになります。分区の時点…については、ニュータウン内の定着、道路網、交通機関の整備などが必要とされるが、現在時では、未だ条件が成熟していないので、「再編成は困難である」と、「答申」は指摘しています。
分区までのステップ
しかし、これではいつになったら分区されるのやら、です。そこで、答申は、分区前の行政サービス充実を次のように提言しています。
第1段階として、両区にまたがる地域を対象にした、基礎的行政サービス(住民票の写し、印鑑登録証明、戸籍謄抄本など)コーナーを設ける。
さらに、第2段階として、支所的機能(サービスコーナ−の機能プラス税務・保障年金業務等)をもつサービス・センター設置、そして最後に分区、と第3段階の改善を考えています。
ただし、両区にまたがるため「従来のような行政区単位での事務処理では行政サービスの低下は避けられない」ため、各種業務を電算化し、両区役所とオンラインで結ぶ必要あり、と述べています。
戸塚・緑・港北は全国のベスト3
要するに、横浜市の場合、同市の戸塚、緑、港北の3区が、全国政令指定都市の行政区、111区の上位3位を占め、また面積も、戸塚78平方キロ、緑76平方キロ、港北44平方キロと、横浜市の区平均面積31平方キロを大幅に上回っています。まさに横浜市の早急な対応が望まれるところです。
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イラスト:石野英夫 |
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しかし、出張所のもつ住民サービスの側面と多重組織のもたらす弊害とを慎重に勘案しなければならないと、都区内のように出張所などを、数多く増やすことには、横浜市は慎重だと言えるでしょう。このことは、隣の川崎市でも同様で「現在の時点では、具体的にスケジュールを組むに至っていない」(市民局区政課)との回答をいただきました。
現在、世田谷区では、住民票の写しや、印鑑関係証明、並びに戸籍関係証明は、ファクシミリネットワークにより、管轄区域に関係なく、区役所、出張所などで取り扱っており、目黒区でも同様のシステムが検討されています。行政サービスも、今、OA化の波の中に揺れ動いており、システム的な変化が、行政サービスの変化をも促し、業務がより簡素化されていくものと思います。
港北区の分区間題は結局、港北ニュータウンの進展状況にらみということでしたが、他の区で実施されているような新しいシステムの導入もあわせて、都市の発展に見合った行政サービスの充実を市に熱望します。
取材・文:西野裕久
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