前号の駐輪問題特集は、数字で追ってみたわけですが、今回は駐輪問題に向けての対策について、述べてみたいと思います。
前号でも書きましたが、駐輪公害は神奈川県内、中でも港北区内に多く見られます。まして、横浜市は目下、「自転車条例」制定への動きもあります。そこで、横浜市が現在進めている、モデル地区活動についてまずレポートします。
モデル地区とは
モデル地区――正式には放置自転車対策モデル地区――とは、駐輪問題解決のために、横浜市が昭和58年度から、行政と地域の人々との連携で推進してゆこうと、市内28駅の周辺を指定したもので、港北区内では菊名と大倉山とがこれに当たります。
今号では、菊名モデル地区の協議会で陣頭指揮をとっておられる富岡浩吉菊名地区町内連合会・会長に経緯と現況についてご意見を伺いました。
荷札作戦と広報活動
モデル地区活動の主たる活動として、まず荷札作戦があります。菊名での荷札作戦は、放置してある自転車に赤札をつけます。そして次週にも依然として赤札かつけてあるものは、自転車については鶴見区生麦にある横浜市の自転車置場に撤去、移送し、オートバイは、菊名の駐輪場に移します。
以前は、最初に“白”札→ 次週“黄”礼→ 次々週“赤”札、それでようやく撤去と4週間にわたっての活動をしていたのです。しかし、「これでは甘い」と今のように取り締まりを強化したそうです。
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イラスト:石野英夫 |
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荷札作戦の効果について富岡さんは、置き方がやや良くなり、撤去される自転車数も漸減しているものの、実態としてはイタチゴッコ、自転車置場設置も予定としてはあるようだが、たとえ置場ができても解決するわけでもなく、住民の自覚に待つところが大きいと話されていました。
そこで住民の自覚、モラルの向上を目的に、もう一つの主たるモデル地区の活動、広報活動があります。毎戸一軒一軒にビラを配り、駐輪問題の深刻さを知らせたり、回覧板で住民意識の高揚につとめたりしています。
また他にも東口の成田山下および西口横浜線ガード下にガードパイプを設けたとのことてす。自転車の洪水だった同所は、自転車がきれいになくなって、人がスムーズに通行できるようになり、「これは効果があった」と話されていました。
自転車条例へむけて
以上、モデル地区活動について見てきましたか、菊名は以前から町内清掃のとき、自転車の整理をしていたように、取り組みは前向きであったと言えるでしょう。しかし、それでいて、「イタチゴッコ」という状況であるのは、駐輪問題解決に向けての、法的な規制ができないことがあるのではないでしょうか。ゆえに、先に掲げた「自転車条例」が必要なわけです。
条例については、昭和60年2月2日の読売新聞横浜版では、「放置が目立つ駅前に駐輪禁止区域を設け」「禁止区域に一定時間以上止めた自転車などに対しては、移動料の名目で罰金も徴収できる内容」と報じています。
現在、横浜市の方は検討中とのことで、内容の確認はできませんでしたが、条例制定こそ、社会問題としての駐輪問題に行政側が深くメスを入れることになるので、素早い対応が必要と考えます(新聞報道では10月実施)。
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ま と め
さて、前号、今号と2回にわけて特集した駐輪公害の諸問題を整理すると、次のようになるでしょう。
1.駐輪場設備の絶対的不足
東横線沿線全体で、駐輪場に収容されている台数の割合はわずか16.8%。すなわち83.2%の自転車が違法駐車されている実態は、まず指摘されよう。
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菊名駅東口の駐輪場。しかし全体の32.9%しか収容されていない
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2.駐輪場を作っただけでは解決しない
しかし、東横線沿線の駅周辺は建て込んでいて、なかなか駐輪場を作ることは難しい。さらに、せっかく造ってみても、造られたことで駅周辺の人まで自転車を使うようになり、結果的に自転車の数をふやしてしまったとの例もあり、単に駐輪場を造っただけでは効果は半減。
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東横線の高架下にできた、沿線最大規模の大倉山の自転車置き場。この駐輪場ができたことで大倉山では逆に1000台も増えた |
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3.住民のモラル向上
1,2と見てくると、駐輪公害のもう一つの隠れた部分として、利用者側のモラルがある。駅付近の人は歩き、また自転車を使う人も、整然と駐輪することなどが、住民側に要望されている点である。
以上、3点にまとめてみましたが、こうなると、駐輪問題は放置自転車への対策だけでは不十分だと言えるのではないでしょうか。
さらに、一歩進んで、総合的な交通体系の整備、これなくしては解決され得ないでしょう。なぜなら、自転車を放置してゆく人々の大部分は、バスが遅れる、他の交通手段がないなど、必要不可欠のものとして、自転車を利用しているからです。
私からのお願い
最後に取材者の私からのお願い。駐輪台数を減らすためにも、駅間辺の方々は、5分早起きして、駅まで歩いてほしいと思います。つまらないお願いのように聞こえるでしょうが、“雨だれ石を穿つ”の諺どおり、まず身近なところからしか、駐輪問題の解決の糸口は見つからないと思うからなのです。
★今号では、菊名を大きくとりあげましたが、他にも田園調布のように地元の田園調布会が自主的に進めているところもあります。「うちではこうしている」など、駐輪問題についてご意見がございましたら、編集室まで是非お願いします。今後も引き続きとり上げてみようと思います。
もちろん、その他の問題もどうぞ!
取材・文:西野裕久
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