編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.503 2015.03.03 掲載

        

   追跡! 地域問題
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編集室が責任をもって取材し質問に答えます!           
                                               
 
 
   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”

   掲載記事:昭和58年9月1日発行本誌No.18  号名「梨」

  近所迷惑な 慶應大学の馬場


今村道子
(主婦 港北区日吉4丁目)


 
慶應大学馬術部の馬場の近くに住む者です。この馬場は歴史が古く、その後家が建ち込み、現在では住宅が馬場を囲むように密集しています。

  この馬場のほこり、悪臭をめぐって、私たち住民がもう5、6年間も運動をしているにもかかわらず、いっこうに改善が為されません。

 何といっても風の日の砂ぼこりがひどく、そのうえ、馬糞の乾燥した物まで風に舞い上がると思うとゾッとします。住民運動の結果、設置されたスプリンクラーも、学生の怠慢からか、こちらで注意しなければ放水しないような状態。馬場内外の棚も厩舎も老朽化しており、これが悪臭や羽アリの発生の原因でもあります。


イラスト:石橋富士子

 住宅より先に馬場があったということで、強気のようですが、もう少し環境整備を考え、住宅とうまく共存していけるようにする努力が必要だと思います。


 
      編集室から!

 慶應大学馬術部と住民との問題は、かなり深刻です。すでに住民運動もしているのに、改善されないため、馬場の移転、環境整備を願って署名運動を始める計画もあるようです。


横浜市本庁の市公害汚染局大気課にも苦情が持ち込まれ、調査を行なっているようです。大気課の篠原俊夫さんの話。
 「粉塵の対策として大学側で行なっていることは、30`リットルの貯水槽と散水栓を設置し、その栓にホースをつないで散水することです。これで粉塵は防げるでしょう。ただ、陳情のあった6月頃は風が強く、馬場の管理人さんの話では『30キロリットルの貯水槽は井戸水にたよっているので、水が溜っていなくて散水できないことがある』のだそうです。
 やはり問題としては、施設面よりもその施設の管理・運用の方がうまくいってないのでは…。
 その一つの原因としては、馬場の管理をする馬術部員が当然学生であるために、毎年人が入れ替わる。そのために散水作業を怠ってしまうことが起こるのでしょう」。

 横浜市では、こういう住民と大学との問題は、むしろ介入しない方がうまくいくと考え、今は大学側と住民とが直接折衝しているとのことでした。

 そこで大学側の見解。日吉事務室用度課長によると、
 「日吉校舎の敷地の多くが山がちなので、馬場を移転させることは無理であろう」という程度の返答しか聞けません。馬場の直接の管理責任者である三田体育会事務局に問い合わせたところ、
 「厩舎については近々、できれば今年度中に新厩舎を着工する予定です。新築の厩舎は鉄骨の2階建てになり、配置も変わります」。
 住民側は高い屏や柵の修繕を望んでいるようですが…、とさらに質問をすると、
 「それに関してはわかりません」とぞんざいな対応。
 大学側の両者とも、このように高姿勢なのは、何もない所に馬場が建ち、その後住民が移住してきたのがトラブルの原因てあり、占有権は慶応側にあるという考えからなのでしょう。
        取材:西野裕久(奥沢 大学生)

 地下鉄工事による 地盤沈下


山前 邦臣(医師 港北区篠原町)


  私の診療所があります篠原町は新横浜駅東南の自然に恵まれた良い住宅地です。ところが、この地に最近困ったことが起こっているのです。というのは、昨年あたりから地下鉄の工事が始まったのですが、その頃から続いている激しい地盤沈下のことなのです。

 私の診療所もまず入り口のドアが、それから中のドア、トイレのドアが相次いで閉らなくなりました。



イラスト:石橋富士子

 そして床面、建物全体が急速に傾斜しはじめました。また地面には数十センチの亀裂が入り隣のアパートも同様に沈下しております。このような調子ですから、棚から薬がころげ落ちたり、はたまた診療中に患者さんの椅子が動きはじめ、めまいを感じる始末です。近所の篠原幼稚園では、激しい地盤沈下のために階段を新設したそうです。基礎工事のしっかりしているはずのマンションなどでも、沈下が見られます。

 地質にも問題があることは確かですが、地下水をきめ細かく止めない地下水の工法にも問題があるのではないでしょうか。これからの対策などについて、お伺いしたい。



 
 編集室から!

 
トンネル工事による地下水の枯れや地盤沈下など、全国のあちらこちらで見られますが、さてここではどうなっているのでしょう。
  さっそく当該の部分の責任者である横浜市交通局高速鉄道建設部第2工事事務所長の池田正さんに伺ってみました。池田さんによれば、
 「もともと新横浜一帯は地質が悪いということで、それに対応して工事も行ってきました。
 そこでこの部分では地表への影響を最小限にすることができるサイロット工法がとられました。
 三ッ沢地区でも幅
6mに高さ11mのトンネルという、都市部では初めての大断面でありながら、上を通る国道1号線への影響はありませんでした。
 ところが篠原は地盤の悪い泥炭層の下を地下鉄が通るため、地盤沈下を完全に防ぐことができなかったのだと思います」
 ということでした。

 さて今後の対策については生活に今すぐ必要なものは応急措置を、待っていただけるものは工事が終った後、措置を講じる とのことです。ただ、篠原の場合は地下鉄工事がはじまる前からも地下水のくみ上げで、マンションのプロパンの集中管理室が傾くといった被害が出ているわけで、地盤沈下が一概に地下鉄工事によるものだとすることはできないようです。また横浜市のほうでも、工事のはじまる前に調査会杜に委託調査をさせていて、その時点ですでに地盤沈下は見られたのだそうです。

 つまりは、地盤の悪いところへもってきて地下鉄工事と地下水のくみ上げの二つで激しい地盤沈下を引き起こしたというところでしょう。しかし、さらに都市整備という点で上下水道の設置の遅れがここに問題として浮かび上がってくるわけで、新横浜の街づくりのうえでも、今後の行政側の積極的な対応が強く望まれるところです。 
    取材:西野裕久(奥沢 大学生)
 
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