<日本人スチュワーデスは外国人にばかり愛想が良い>。会社に送られてくる苦情の中で実に多いのがこれです。
日本の航空会社の日本人スチュワーデスが自国の旅客に対して無愛想とは、どうしたわけか…と憤るご本人の表情までが眼に浮かぶようです。仰せのとおり、思い当たることもあります。でも、ちょっと待って。
サービスの受け方が上手な外国人
例えば「忙しい時に悪いけど」「後で手がすいたらでいいんだけど」といった前置き付きで、「コーヒーを.一ついただけますか?」と頼まれるのと「おい、コーヒー」とたった一言、ニコリともせずに受け取って「もう一つだよ。気が利かないな」と.言われるのではずいぶん印象が違います。
前者の場合には即座にお持ちして、そのうえニッコリ「ありがとう」と言われればこちらもニッコリ…。
後者の場合には文句の一つも言いたくなるし、つい仏頂面に…。言うまでもなく、前者は代表的な外国人旅客、そして後者は典型的な日本人旅客の姿です。
お食事サービスも後半戦、右手に急須、左手にお盆を持って客室を巡ります。「日本茶は如何ですか?」……お茶をご希望の方はその意思を示されてから、カップをお盆の上に置いてくださればいいのです。その時、「あ、ちょっと」と一声。「それ、コーヒー?」「いいえ、お茶でございます」。あなた日本人でしょ? 日本のどこでこんな陶器の急須にコーヒーを人れるっていうの〜″
「あ、そう? コーヒーがいいな。コーヒーないの?」
「少々お待ちくださいね。すぐにもう一度まわって参りますので」何見てるのよ。たった今、コーヒーの係がコーヒー如何ですかってあなたの傍らを通ったばっかりじゃないの!″
さて、さらに通路を進みます。「ねぇ、ちょっと」という声の主に目を向けるとご本人、キレイに食べ終えた食事のトレイを両手で支えてこちらの方へ差し出しています。 「これ、さげて」
「ちょっとお待ちくださいね。すぐさげさせますから」。両手で持っている状態で、一体どうやってあの大きなトレイを片付けろとおっしゃるのか……。
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多くの日本人は、どうもタイミングに乗りそこなっておられるようです。
このズレはサービスする側にとって不愉快ではありますが、受ける側にとっても、今コーヒーが欲しいのにとか、さっさとキレイに片付けて欲しいのに、など……非常にイライラするモトになるのではないでしょうか。
乗務員のテンポに合わせる配慮
飛行機は大型化時代に入り、エコノミークラスでは一人の乗務員が50人の旅客を担当することになっています。それぞれのご要望に応じていたら50人50色、とても到着までにサービスは終わりません。となれば勝手な言い分ではありますが、お客様の方でもある程度真剣にサービスを受けていただきたいのです。
我々が今、何をしているのか、どんな状態なのか。個々の要望に応えるのは不可能でも、お客様全員にそれなりに満足していただけるよう動いているのですから、旅客が乗務員にテンポを合わせることも、最近の旅では大切なポイントだと感じます。
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イラスト:石野英夫 |
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お客様とスチュワーデスの呼吸がぴったり合った時、サービスもまた本領を発揮します。お客様が満足されているその手応えは、気持ち良くサービスできたという実感として我々に伝わってきます。
快いサービスを受けることができるお客様はサービスの受け方が上手。旅上手はサービス受け上手です!
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