生まれも育ちも田園調布。中学・高校は名門・女学館(ヤカタ)、大学は聖心、とくれば、絵に描いたような沿線のお嬢さまだが、その間、ずっーと文化祭の「実行委員」をやってきた。そう。彼女はただの深窓の令嬢ではなく、「実行」のともなった、飛び跳ねる「ミーハーお嬢さま」なのだ。
あの聖心女子大の、厳しい校則と監視の目をくぐりぬけるようにして、テレビに出たり、キャンペーンガールをつとめたりしていた女学生時代の呼吸(ノリ)も、そのまま今に持ち込まれていた。
何にでも興味を持った。専攻は英文科だったが、山口洋子から大前研一まで何でもこいの乱読派。
「一芸にひいでるのはムリ」と悟ってからは、深さよりも広さで勝負と割り切ったところも末っ子の呼吸。大好きなケーキについても乱食派で沢山のケーキを食破してきたが、その彼女にして、「ここのチーズケーキは、最高!」とニッコリ微笑むのであった。
やわらかなカッテージチーズをベースにした各種のケーキはそれぞれにおいしい。味わいが深いのに、軽い。その軽さに魅せられてボクたちは二人で5つも平らげてしまったのである。
すべてにフットワークの軽い末っ子・理恵子さんだが、こと男性になると慎重のようで、乱読、乱食とはほど遠く、「一途なの」だそうである。そして、「彼」は頼り甲斐のあるしっかり者でなくてはならない。末っ子はどこまでも、人に引っ張られてゆく性、なのだ。
ここ7、8年。マスコミ・文化の主流は、完全に「末っ子」の手に委ねられていた。
有史以来、脈々と流れてきた第一子「長男、長女」主導型の日本の文化は、山口百恵(長女)引退の昭和55年を境にガラガラと音をたてて崩れ、これに代って登場したのがアイドル松田聖子(末っ子)だった。時代はここに、重厚長大の建て前人間=長女から軽薄短小のブリッ子=末っ子へ大きく転換してゆきまして……おっと、こんなお堅い話は理恵子さんに似合わない。
以下は、近著『姉妹型の発見!』(毎日新聞社刊)をご参照いただくとして、要するにこれら末っ子文化の頂点とも言えるテレビ界の象徴が「笑っていいとも!」と「オレ達ひょうきん族」の二大番組だったのだ。(タモリ、たけしも末っ子です)
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アナウンウンサーはマジメでなくてはならない、という旧来の常識を破って、土曜日の超ゴールデンタイムに入社わずか2年目のひょうきんアナ、寺田理恵子さんが大抜擢されたのは、このような時代のニーズがあったわけである。
しかし、末っ子はリーダーシップをとる「時代の旗手」にはなりえない。
「時代の波に乗る」のがうまい、要領のよさが身上なのだ。理恵子さんもその通りで、大学時代は女子大生ブーム、入社時にお嬢さまブーム、2年前にはひょうきん族、と常にブームに乗ってきた。
そして、現在は特番の司会のほかに、ニュースを読んでいるのである。いわば、報道に片足つっこんだわけで、これからは女性ニュースキャスター・ブームの一案を担おうとでもいうのでしょうか?
「でも私、暗いニュースを読んでも、サマにならなくてェ」
そりゃそうだ。寺田アナのあの笑顔でニュースを聞かされたら、どんな事件もみーんな明るく見えてしまう。ならば、いっそ明るいニュースしか伝えないアナになっては、どうかしら。 暗い事件は日テレの小林完吾的おじさんアナにお任せして。
「本日、竹下総裁が誕生しました」と寺田アナが伝えれば、直後「失意の安倍さん、涙の宮沢さん」と男性アナが伝えるのだ。
明暗コンビによる明暗ニュースショー。いかがでしょうか、編成局長。
と、話は脱線し続けるのも、末っ子の性(さが)。
いずれにしても、末っ子の属性を完全に備え、その特長をフルに発揮している寺田理恵子さんは、やはり、時代の申し子である。
唇に微笑みを絶やさない。唇にチーズ!を。
末っ子、理恵子はチーズっ子なのだ。
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