編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:伊奈利夫
NO.482 2015.02.19 掲載 

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NO.   アルメル・マンジュノさん

          日吉駅西口駅前近く「ぶどうの家日吉店」

   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和59年5月1日発行本誌No.22  号名「槙」


   文・イラスト/畑田国男(漫画家) 写真/出口道和
 


  アルメル・マンジュノ       (山羊
 
NHK・フランス語講座、アテネ・フランセ講師。本誌「アルメルの艶線漫遊記」でお馴染みのアルメルさんはフランス・グルノーブル生まれ。夫・丸山氏と現在、日吉本町に在住。
 日本に来たばかりの頃は、フジヤマ・ゲイシャ・サムライしか知らなかったアルメルさんは、今では梅干しと鍋料理をこよなく愛し、「艶線漫遊記」の毎回見事な日本語の原稿を締め切りまでにキチンと届けるほど。


 
フランスでは日本は「大変評判が悪い」のだそうである。
  すべての文化がコマーシャリズムに流されて、過去の良き日本の姿を喪失している。ゴチャゴチャした文化は混沌の極み、だというのである。
 こんな感想をもらすフランス人にアルメルさんはいつも反論してくれる。
 「それはバイタリティーの証し。パリは眠っているけれど、東京は生きている。今、世界で一番面白い国は日本ですよ」
 在日年。アルメル・マンジュノは、もうホトンド日本人なのである。
  若者に接することか多い。
 「フランスの学生に比べると、もう、どうしようもなく子供ぽいの。特に男の子なんか、明るくて、オシャレで、可愛くて」と目を細める。
 フランスの学生は大人なんですか?
 「もちろんです」
 あちらでは、中・高校時代から寮に入り、親元から離れて暮らす学生が多く、なんでも自分の意志で行動するようにしつけられている。
 日本の学生は?
 「遊びの天才だし、みんな色々なことをよく知っている」
 でも、みんな表面的な知識ばかりで、そこには自分の主義も意見もない、とチクリ。
 こう書いてしまうと、いかにも厳しい青い目の日本批判、ととられてしまうけれど、アルメルさんの流暢な日本語にトゲはない。

       フランスから来た女、アルメル

  日本の学生の幼さ、可愛いらしさを心から面白がっている風なのである。
 ボクら日本人は、外人さんにどう見られているか、とても気にする。日本人は比較文化論や日本人論が大好きな国民である。
 だから心理学専攻の聡明な美人・アルメルはよく日本人につかまって尋ねられる。
 「日本人ってどんな国民だと思いますか?」
 そんな時、彼女は決して分析などせず、結論を急ぐことなく「わかりません」と答えることにしている。
 「日本は激しく変化しています。今はどんなことを書いても5年経ったら通用しなくなってしまう」
 来日5年でこう悟ったアルメルは、しばし変化の流れに身を任せ、日本の混沌の毎日を楽しむようになったらしい。
 ただ一つ、「日本人は素直だから」という言葉が、彼女の大きな感触、とボクは見た。

 フランス人は一人一人が自分のライフスタイルをガンコなまでに守っている。たとえば「電気のカサ一つを探すのにも、45年かけアチコチのノミの市を見て回る」ほど、自分の趣味をつらぬき通して生きている。
 「パン屋さんでも、代々行きつけのお店が決まっています」。ワインも、ケーキも、自分が納得したものをトコトン大事にし、決して浮気をしない、という。
 じゃあ、アルメルさん。日本ではどこのお店のケーキがあなたのお好みなんですか。
 それがここ。日吉の「ぶどうの家」なのです。
 彼女がこの店で飲むのは、いつもアッサム・ティ。ケーキはパンプキン・プディングなど野菜やフルーツの素材を生かしたさっぱりしたものばかり(種類は他にも多々あるが)。
 そうかー。こだわり、かー。
 ボクはこの年間で入ったケーキ屋さんが120店。食べた種類は200以上。
 人の噂と雑誌の情報をたよりに駆けずり回って食べ歩く。別に主義主張があるわけではなく、好奇心だけが支えなのである。
 だからこのお店のモンブランのように、「アーモンド入リビスケット生地やシュー皮でつくった小さな葉の飾りを見つけ、その細かな芸に感心し、ブランデーの香りあふれるマロン・ペーストに、「ウン、大人の味」と満足している、そんな素直な男、ではあった。


 
ケーキについても、他のことについても、何のこだわりもない浮気性、なのである。

 少し日本のおじさん族について訊いてみよう。アルメルさんは本誌「艶線漫遊記」で大勢の中年男性の生態にも精通していらっしゃるのだから、ね。

 「日本のおじさんは女を、奥様と遊ぶ女の2種類を上手に使い分けています」
 そして、「遊びの対象は必ず若くてピチピチした女の子」である、と強調した。
 それは当たり前、ではないのですか。ということは、フランスでは事情が違うわけですか?
 「フランスの男性は奥様を一人の女として一生愛し続けます」
 「もちろん個人差はあるけれど、基本的に浮気は許されない。亭主に他の女ができたら女房はこれを許しません」
 だから年老いた夫婦でも二人の生活を大事にし、いつまでも恋人同士のような緊張感がある、というのである。
 ストリップ小屋でも、覗き部屋でも、愛人バンクでも、ラブホテルでも、おじさんが血道を上げるのは、トーゼン若いピチピチギャルである。
 それがアルメルにはわからない。
 「学生も幼いけれど、おじさんも幼いのよ」

  日本男児はみな、ロリコン。
 こう語るアルメルは、初めてフランス女性の誇りと魅惑をチラリとのぞかせた。
 「だって、女は30からよ」

 大人の国フランスからみれば、まだまだ日本は恋も開発途上国。ボクもアテネ・フランセへ入学しなければ‥‥‥。





  日吉
  ケーキ&ティ「ぶどうの家日吉店」の巻

 港北区日吉本町1886(日吉YMビル)
  пi
045562-298162--2981
 昭和526月「イーソラ・ピッコラ」オープン。姉妹店「ぶどうの家」は昭和58年9月に。
 綱島にも支店。小島社長は工ンジニアから脱サラ、奥様の手作りから出発。カボチャ好きのご主人からヒントのケーキは特に傑作。ケーキの味をより引き立てには8種類の本場紅茶と生花を飾りつけた店内。

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