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編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:伊奈利夫
NO.481 2015.02.19 掲載

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NO.    五大 路子さん

       港北区高田町 洋菓子「ヴァムン」

   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和59年3月1日発行本誌No.21  号名「檜


   文・イラスト/畑田国男(漫画家) 写真/出口道和 


    五大 路子
   
 (乙女座
  女優。菊名生まれの菊名育ち。
 神奈川学園高校 桐朋学園卒。早稲田小劇場を経て、「新国劇」のホープとして活躍。テレビではNHK「いちばん星」の主役がデビュー、舞台でも活躍。
 大和田伸也氏と結婚の後、現在自宅に「スタジオ005」を地域文化の核として無料で仲間たちに開放している。この
3月には帝国劇場「松屋のお琴」に出演。

 
 写真は新横浜の自宅玄関前で夫君の大和田伸也さんと長男と…


 
二言目には「うちの伸也さんが」とくる。これは(畑田国男のケーキdeデート)なんですよ。
 せめてこの3時間、ご主人のことは忘れてもらわなくっちゃ……と、こちらはなんとか話題をそらそうと苦労した。
 その成果があがったか、ただの「おのろけ拝聴」に終ったか。ご判断は読者の皆さんにおまかせいたしましょう。
 「路子はしゃべり過ぎるんだよ。まず初めに取材の目的を確かめて、必要なことだけを答えなさい」
 昨夜、路子さんはご主人・大和田伸也氏にこう言われた。
 「ケーキ取材なら、ケーキの話だけをしてくればいい」
 しかし、そうはゆきません。
  「自分のことを分かって欲しいから、つい、おしゃべりが長くなる。それに私、お相手がいい人だと、全部さらけ出さないと気が収まらないのです」
 そうでしょうとも。いい人、だとね。
 五大路子さんは、早稲田小劇場、新国劇を経て、テレビ、舞台に幅広く活躍している。
  深窓の令嬢が役者の世界に飛び込むにあたって、周囲の反対はかなり厳しいものがあったようである。しかし、彼女には一つの信念があった。
  芸の世界の華やかな部分に憧れたことは一度もなく、自分を生きるため役者を志した。彼女はそれを「旅」に例える。人生は「自分をみつける心の旅」だ、というのである。
  早稲田小劇場の後、「一年ほど修業のつもり」で入った新国劇で転機を迎えた。

       路子の路は、伸也の路

 「舞台に立つと、両足が板に吸い込まれるような気になりました。頭がではなく、身体が“これだ。これだ”と言うんです」
 かつては赤毛ものにも憧れていた彼女だが、新国劇の世界に接し日本人の血が騒ぎ始めたようなのである。
 念願の「一本刀土俵入り」のお蔦役を最後に、テレビ界へ。NHK「いちばん星」の主役という大抜擢で鮮やかにデビュー。
 さらに「水戸黄門」の共演が縁で格さんこと大和田伸也氏との結婚へ。
 「肩の荷は楽になったけれど」彼女の旅はまだ続くのである。

 また伸也さんの話になりそうなので、
 「ま、ここいらでヴァムンのケーキを」と話をそらす。
 イタリアンモンブランとアニマルケーキ。どちらも他の店では見たことのないユニークな洋菓子である。
 路子さんは栗が大好物でモンブランを。本物の栗100パーセントとフレッシュバターでつくった新種のモンブランに舌鼓を打つ。「マァ、おいしい!」と、路子さん。
 ボクのアニマルケーキはマジパンを主にしたチョコレートケーキ。たべるにはもったいないような凝ったデザインが可愛らしい。
 「家でケーキ食べる時には伸也さんと半分ずつ。二つあれば半分ずつ頂くの」。また、伸也さん、か。
 現在、大和田家では自宅の1階にスタジオを造り、仲間を集めては各種教室を開いたり、地元文化について語りあったり。
 彼女の周りには自然に人が集まってくるようである。
 結婚前、よく一人で本当の旅に出た彼女。
 「どこへ行っても巡り合うのはいい人ばかり。男の人に危険を感じたことが一度もないの。私って、色気がないのかしら?」と、屈託なく笑う。
 19歳の時、子供が目の前でやっていた空中回転を何となくマネをして頭から着地。首の骨を折って1カ月の入院生活をしたこともあった。
 

 
この事故が、自分を見つめる一大転機にもなったという。
 一見深刻な「人生訓話」になりそうなお話さえ、路子さんの話術にかかると「ドジな思い出話」と化してしてしまう。

 これらはすべて五大路子の人柄、のせいであろう。だから、夫君伸也さんのおのろけだとて、本当のところ全然聞き苦しくはないのである。
 結構ですよ。どんどん伸ちゃんのお話聞かせてください、と居直りの気分。
 「とにかく真面目。理想主義者。やさしく、そしてデリケート」
 妻、路子としては夫君がちょっとでも落ち込んで来るとキャッキャと明るく振る舞ってなんとか慰めようとする。
 伸也さんは幸せだなー。
 路子さんの笑顔の励ましは、お蔦が2階から垂らした赤い扱帯(しごきおび)に結び付けた金と櫛とかんざし以上のものですよ。これを見れば駒形茂兵衛は、否、伸也さんはきっとこう誓わざるをえないだろうなー。

 「お蔦、オレはきっと横綱になって見せるぞ」
 こう言って、スタジオで土俵入りの四股を踏むのかなー。




 港北区高田町
         洋菓子「ヴァムン」の巻

 横浜市港北区高田町821(東急バス倉田屋停留所前) 0455923784
 粟100%のイタリアンモンブラン、可愛いデザインのアニマルケーキなど、すべて手づくりの逸品ぞろい。味も良ければデザインのユニークさも他店には見られない、と人気。

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