ボクが初めてマキさんを知ったのは、たしか10年位前のイレブンPMで……。
「うん。セックス体操で売り出したのが、26歳のときだから……」
それまで(美容体操)しかなかったこの世界へ、マキ式の味つけをした「夫婦円満体操」を持ち込み、脚光を浴びた。
そして健康ブームの現在、「美しくセクシーに痩せるエアロビクス・ダンス」(講談社)がベストセラーに。人を見る眼と同様に、時代を見る目にも「女の勘」は生きている。
話の合間にボディーアクションが入り、タンタンタタンと話は踊る。マキさん、ボクとは同世代。
「気軽に胸を開いて、なんでも話せるなー」と言えば、
「そうね。私ってそういう雰囲気あるみたい。教室へ来てくれた人はみんな、おサイフ開いて、すぐ入会してくれるのよ」
時折ボクの肩をポンと叩いたり、とにかく気さくな先生である。
「誰とでもそうですか?」
「うん。新幹線の中で長谷川運輸大臣と一緒になってね。私、宮城じゃ売れてますから、こんどの選挙はまかしといて≠ネんて。そういうの割と平気でできちゃうのよね」
忙しくて、とても結婚するヒマはないそうだが、男性のお友達はもちろん多い。南海ホークスの穴吹監督、ドカベン香川選手、元世界ボクシング・チャンピオンのファイティング原田さん等々。さすが大ピ連の味方。みなさん太った方ばかりじゃないですか。
「そうなのよ。ポッチャリ太目が好きなのよ」
よーし、ボクも.痩せたりといえども大ピ連のはしくれ。喰うぞ。プールミッシュさん、どんどんケーキ持ってきてェ! と、シブースト3個を注文。お酒の好きなマキさんはヨーグルト・ババロアのワインジュレを「女の勘」でご注文。
一口食べて、「アッタリー! おっいしい」
ケーキ食べなからも、早口快テンポのハスキー・ボイスはとどまるところを知らない。
「香川クン、今シーズン調子いいでしょ。4割街道一人旅よね。ここ2年、うちでトレーニングしたし、私がアドバイスしてあげたから」
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マキさんは、人を見て、いや、人の耳を見て法を説くという。ドカベンのように耳タブのたっぷりした人は「おだてると調子に乗るタイプ」だというのである。
「畑田さんの、見せて。‥‥‥…アラ、香川クンと同じ耳だわ」
そうなんです。ボクもおだてられないとダメなのです。先生、おだててェ!
耳じゃなくて体型で人を見る法は?
「ありますよ。O脚の人は金銭的にガッチリしてるから、その辺を抑える、と。
お尻の下がった人は“ケツ断力”が無いから強く言ってやる、と。お尻の上がった人はケジメのついた人。ケツジメがいいのよね。ハハハハ。だから……」
彼女の科学的なる体型学の熱弁に耳を傾けていると、マキさんの人心操縦が「女の勘」だけではないぞ、と思ってしまう。
ね、もう1回訊きたいんだけれど、どうして結婚しないんですか?
「うん、思いやりが、疲れるのよ」
彼女が夜遅く事務所に帰ってきた時、秘書の尚子さんがアレコレと身の回りのことをしてくれる。それを見ていて、私だったら夫にああはしてあげられないと思うとか。
「今は私が夫の役をしているんですね。結局……」
フトうつむいたマキさんのうなじ。スリムなお耳が見えました。
耳タブの薄い人にはどうすればいいの? マキさん、初めて一呼吸おいて、
「私におだてはダメよ。誠意だけね」
また逢いましょう。お忙しい身体、プライベートではムリでしょうからまた仕事をつくりますので、是非!
「どうしてプライベートではムリなのよォ」
熱く固い握手を交す。
ボクの心が大きく踊った。公園通りの昼下がり。
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