編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.477 2015.02.17  掲載

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NO.    岡江 久美子

        自由が丘南口駅前・クレソン

   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和58年9月月1日発行本誌No.18  号名「梨」


   文・イラスト:畑田国男  写真:辻村 功



   岡江久美子
   
獅子座・AB

 
女優。本名は大和田久美子。
 学芸大学に生まれ、育ち、学んだ「沿線っ子」。昭和50年「お美津」のヒロインでデビュー以来、テレビ、ラジオ、CMに大活躍。昭和57年には、講談社スコラから写真集「華やかな自転」。
 ポリスターからLPレコード「YES! FEEL」(ちょっとジャス)。先頃、大和田獏さんと結婚。NHK「連想ゲーム」のレギュラーとしてもお馴染であった。







 
――岡江久美子と、くれば誰だって「優等生」とくる。
 学芸大学附属の小・中学校を経て、鷗友学園という学歴をきくと、さらにその思いを深くする。

 学芸大附属は数少ない国立の小学校で教育実習のモデル校。2次まで厳正なテストが繰り返され、4次には無情の「クジ引き」が。
 
TBSポーラ・テレビ小説「お美津」のヒロインでデビュー。この大抜擢を考えても、美貌が招いた技とはいえ、あわせて彼女の「強運」を思い知らされる。
  久美子さんに連想してもらう。
  ――――料理
 「イカのしおから」
  ――――カエル
 「解剖」
  彼女は外科医に憧れていた。解剖してゆく過程が好きだそうで、イカ料理が得意なのもその辺の事情によるらしい。
 「手間のかかることは苦手で、手際よくパッパッと料理しちゃいます」

 女医の役なんかもやってみたいらしいが、世間は彼女に「お嬢さま」を期待する。
 とにかく読書がお好きらしいので、も一つ連想を。
  ―――― 本屋
 「トイレ」

 トイレでよく読書するんですか? 中に久美子文庫なんかあったりして。
 「いいえ。本屋さんでよく人と待ち合せをするんです。本を読んで待っていると、どういうわけか、トイレが近くなる」

        クミコ、カムバク・ツー・ミー

  待ち合せ場所に早く行きすぎて、長時間読むから?
 「そうじゃなくて、活字を追っていると、なぜか‥…。本の紙に秘密があるんじゃないかと思うんですが」

 では、どんなジャンルの本が好き?
 「ノンフィクションです。ウソっぽいお話は嫌いで、山谷のドヤ街日記とか、精神病院の話とか。今は児童心理の本を探しているんですけど」
 それでは、本題の、――--ケーキ
 「エクレア」
 どちらかというと辛党の久美子さん、ケーキは時折食べる程度だったけれど、ここ教カ月、無性にケーキを食べまくっているという。

 「朝食がわりにケーキ3個なんてこともあるのよ。味覚がすっかり変わっちゃってね。でも、スポンジは嫌いなの。

  シュー生地のエクレアとか、ババロア、レアチーズケーキばっかりですね」

 ボクは、「ケーキはスポンジに始まり、スポンジに終わる」と思っているスポンジ党。どうしてスポンジがお嫌いなのか!
 「だって、中がスカスカしてるでしよう。学生時代、<うすい、ね>って言葉が流行ってたの。ルックスはいいけど、中身のない男の子なんか、<あ、うすそう>っていう風に使うんだけど」
 そのテンで言って、スポンジは<うすい>。本のように中身ビッシリじゃないとイヤだとか。

 子供の時からそう思っていたらしく、デコレーションケーキなんか、上の生クリームだけ食べて、スポンジには手をつけなかった、というケシカラン話。
 何というもったいないことを! 怒りたい気持ちになったけれど、ここは美貌に免じてグッとこらえ、クレソンさんのメニューを差し出す。
 「お願いします。こちらのスポンジを是非とも一口お試しください」

 「じゃあ、レモン・ムース」
 これまで穏やかに話を進めてきたところで、彼女の言葉をつなぎあわせ、ボクはある連想を試みた。

 解剖、トイレ、児童心理の本、味覚の変化、レモン・ムース、
 もしや、おメデタでは?
 「シーッ! 内緒、内緒」



 もう小一時間経っているのに、彼女の外観からは全くそんな雰囲気が感じられない。妊婦特有のムクミなどは全く見られず、その笑顔はテレビのブラウン管を通して見た、さわやかなものである。

 久美子さん、レモン・ムースをエレガントに平らげてから、
 「おいしかったわ、とても」
 「ね、スポンジもいけるでしょ」
 「これ10個ほど買って帰ろうかしら」
 フランスで6年修業を積んできた福田シェフ自慢のシャルロットとムース、このお陰で何とか溜飲を下げることができました。コニャクはハネシーをヒタヒタに使ってある。こんなぜいたくなケーキも珍しい。それにスポンジのキメの細かさは久美子さんの肌のよう。
 これからしばらく産休で仕事を離れるという久美子さん。これまでは「お嬢さん役」のワクに縛られていたけれど、なあに、2年も経てば、
  ――――岡江久美子
 「おんな」
  と言える女優に生まれ変わっていると思う。

 最後に、もう一つ、
  ――――夢
 「バク」
  夢を食べる動物のバクか、ご主人様・大和田獏のバクかは、あえて問いはせぬ。
 ファンの一人として、家庭の匂いなど持ち込まない岡江久美子の(カム・バク)を夢みているから、である。



 
自由が丘
 フランス料理・洋菓子・喫茶「クレソン」の巻

 所在地:目黒区自由が丘1--713クレオビル2F 
 ℡
0337245444
  営業時間1100AM1100PM 定休日・水曜日
 フランス菓子の本格派で、デザートケーキも多い。最上の洋酒を使用しており、おいしくいただくためにテイクアウトはご近所の方に限る、とも。

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