編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:伊奈利夫
NO.474 2015.02.16  掲載 

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NO.    松阪 隆子さん

      大倉山 フランス料理「ドミニク」

   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”

   掲載記事:昭和58年1月月1日発行本誌No.14 号名「橙
(だいだい)

   文・イラスト:畑田国男  写真:森 邦夫


 松阪隆子さん(双子座・A型)

 
女優 テレび朝日「悪女の招待状」、TBS「花祭」でおなじみの松阪さんは大倉山在住。
NHKラジオ第T「地獄の道化師」では声の出演も。


 まずオーナー店長の田中さんが嬉しい第一声、「当店のケーキはデザートケーキですから、お飲み物はワインなど、いかがでしょう」

 いいですねー。
 一目会ったその時からすっかりウマの合ってしまった二人。ドイツの白、ラインガウノ・シュペートレーゼの盃を傾けつつ話もはずむ。
 子供の時、宵っぱりで水割りを寝酒に飲んでいたというだけあって、彼女、お酒の方もかなりいけそう。

 松阪隆子さんは昔から馬が大好きで、馬術部にあこがれ成城の短大へ。文化史を専攻し卒論も「馬の図像」について。

 馬のどこがそんなに好きなの?

 「プロポーションの美しさ。目の優しさよ」

 ここでケーキが運ばれる。

 彼女はチーズケーキ、ボクはリンゴをクレープで包んだクレープ・ラングピーユ。

      馬に魅せられ疾走する女

  

 「ワッ、畑田さんのおいしそー。ね、ひと一口いい?」

 「結構です。そのかわリボクも」とお互いのケーキをつつきあう睦まじさは、とても初対面とは思えない。
 
「お友達とケーキを食べる時、私いつもみんなのを一口づつ戴くの」
 人呼んで<恐怖の一口女>。
 「一口食べれば全部分っちゃう」
 こと男性に関しても同じだそうで、第一印象で相手がどんな男か見抜いてしまうという。
 そうですかー。で、ボクの場合はいかがなものでありましょうか?
 「バッチリですよ。ホント一に」
 ご覧のように丸顔のボク。馬のイメージとは程遠いと思っていたのに有難いお言葉。
 2本目の白ワイン、ラインハルト・アウスレーゼの酔いも手伝い、ホホはさらに赤くなる。
 いかんいかん、話をケーキに戻しましょう。
 隆子さん、ケーキはシュークリームやパイ生地など、皮のあるものがお好みで、「スポンジのブヨブヨより、皮のツヤツヤがいいの」と、どこまでも馬のイメージから離れられない。
 彼女の「馬」志向は、女優・松阪降子の自己投影ではないか。きびきびと、はつらつと。彼女を画面で見ていただければ、ボクのこの意見、十分に納得してもらえると思う。
 テレビ、ラジオ、舞台の忙しい合い間をぬって今、彼女はジャズダンスに凝っている。
 踊る時、馬の動きを意識する?
 「ああ、言われてみるとそうかもね」


 ローレンス・オリビエはシェークスピアの「オセロ」を演ずる時、動物園に通って黒豹の動きから猛々しさを学んだという。

 降子さんは馬を師匠にするといいかもしれない。そうすれば近い将来この世界で、天馬空を行くが如き活躍を見せてくれるだろう。
「これから日生劇場へ『ハムレット』を観にゆきます」と立ち上がる。
 ここで初めて、皮のストーンウォッシュ・パンツとブーツ姿に気がついた。

 キマっている。後姿に見とれていては、見事な脚に蹴られてしまいそうである。

 しかしまた、蹴られてもみたいその脚線美。

 「蹴られるべきか、蹴られざるべきか、それが問題だ」

 などと逡巡している場合ではない。

 ボクはあわてて彼女の横へ並び、この明るいオフェリアをエスコートして店を出た。

 大倉山は夕映えでまっ赤に染っていた。


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