編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.465 2015.02.12  掲載 

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 えんせん族
 
  吉野百合子さん(22)


   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和57年3月月1日発行本誌No.10 号名「桃」


    文:久木朋子  写真:森 邦夫

スリムな体に
  あふれる情熱

 谷桃子バレエ団・
    未来のプリマ

 吉野百合子さん

          (東京都目黒区八雲2丁目)

  アン・ドゥ・アン・ドゥ――気合いの入ったかけ声が響きわたる。ここは、谷桃子バレエ団の朝のけいこ場。

 20人ほどのプロ級のバレリーナたちが、跳んだり、回ったり、迫力満点の踊りをくりひろげている。
 その中に、ひときわほっそりと、可憐な感じの女性がいて、それが吉野百合子さん。
 「ユリちゃんの踊りは、ムードがあるし、体の線がきれい。この間、『ドン・キホーテ』の中でギターの女を踊った時も、スペインの衣裳を着て、それはステキだったんですよ」と大ベテラン、谷先生もご推薦の若手バレリーナだ。


しなやかな彼女の妙技

  今、けいこ中の彼女は、黒のレオタードに汗をにじませ、真剣そのものでも1時間半のけいこが終って、タオルで汗をぬぐうと、もうフンワリとやわらかい笑顔になった。

 毎日こうして、5、6時間は踊るのだそうで、本番前など、トゥ・シューズが一日でだめになってしまうという。
 「でも、そのくらい踊らないと、気分悪いんです。好きなんですねえ……」
  ほんとにそうなのたろう。

  聞けば5歳から始めたバレエを高校卒業まで休まず続け、卒業後は、ひとりイギリスに渡り、ロイヤル・バレエ・スクールで学んできたという。やさしげに見えて、なかなかのがんばり屋さんとお見受けした。
 

 でもご本人はケロリとして、「べつにバレエ一筋という悲壮感はないんです。ごく自然にしているだけ。これでお店の手伝いだって結構するんですよ」
 そう、彼女は都立大学駅近くの祖父の店「三春堂」というケーキ屋さんの一人娘さん。「うちのケーキ、毎日食べてもあきないくらい、おいしいんですよ」と宣伝も忘れない。

 礼儀正しい話しぶりの中に、茶目っ気もあって、バランスのとれた、ほんとによいお嬢さんだ。これじゃあ、お嫁さんにという人も多いだろうし、結婚とバレエの両立はむずかしいでしょ
うと言うと、
 「できると思います」とキッパリ。
 「尊敬するマゴット・フォンテーンのように、女性としても、チャーミングでありたいし、バレリーナとしても、
60歳すぎても踊っていられたらと思うんです」

 さわやかな22歳。がんばってネ。

     
        [
りれきしょ]


 昭和34年6月、目黒区八雲の生まれ、22歳。
 トキワ松園卒業後、イギリスのロイヤル・バレエ・スクールに1年間留学。現在、谷桃子バレエ団の準団員。子供にバレエの指導もされている。愛読書は「赤毛のアン」。

              


その後、劇団四季の女優を経て、現在日本橋室町でモダンバレエ・レッスンスクールを主宰する55歳
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