編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.459 2015.02.08  掲載 
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   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”

   掲載記事:昭和60年12月月1日発行本誌No.31 号名「樅
(もみ)

  子供は信号を出している
  
 …いじめから子供を救うために…
   

  栗原 玲児

  テレビキャスター
  横浜市港北区日吉本町

   想像を絶するいじめの実態


 4年間、いじめの取材をしてきた。聞き取り調査をした件数は320例に及ぶ。一々例を挙げて説明する紙数がないのが残念だが、深刻な実態といじめの内容の陰湿さは想像を絶している。

 あどけない顔をした子供たちが悪魔の所業としか思えないような冷酷ないじめを平然とやってのける。
 美しい少女が、「相手の爪の間に針を刺し込んでやるんだ。ヒイヒイ泣くよ。胸がすーっとする」と語るのを聞いた時は思わず戦慄したものである。性的ないじめも大人社会の性風俗を敏感に反映して目をそむけたくなるほど多様化しエスカレートしている。

  いじめの魔手からの救出法


  当然、犠牲者たちの受ける傷は深い。肉体的に傷つくばかりでなく、、精神的に受けた傷は容易に癒えない。生涯に影響する可能性すら否定できないのである。犠牲者が深く傷ついたり自殺を考えるまでに追い詰められる前に、いじめを発見し救い出してやらなければならない。

  このところ、いじめについての報道量が激増したので、大分世間のいじめ認識も改まり、学校の対応にも積極的な変化が見られるようになってきたが、残念ながら今のいじめは一朝一夕には後を断つまい。教師や親の知らないところでいじめの劫火はまだまだ深く激しく燃え盛っている。私の所に持ち込まれる相談が後を断たないのもその証と言えよう。相談はほとんど全国から寄せられている。東横沿線とて例外ではないのである。

 いじめられている子はほとんど親や教師に告げようとしない。チクる(告げ口)と一層激しい報復が待っているからである。だから感度の鈍い教師だといじめに気付かず、対応を誤ることとなる。


  しかし、子供は無言て必死に信号を発している。明るかった子が無口になる。登校を渋るようになる。食物の好みが変わる。異常に風呂が長くなる。部屋に閉じ篭もる。友達が寄りつかなくなる等々、注意深い親なら気付く変化を子供は必ず見せる。子供を注意深く見ていればいじめを早いうちに発見することは可能なのである。



イラスト:米澤 裕(鶴見)

  いじめの事実を発見したら直ちに教師に連絡するのが良い。教師は手術の執刀医の立場にあるからである。親と教師の緊密な連携プレーを措いて他に、わが子をいじめの魔手から救い出す方法はないと私は考えている。

いじめの病根は……



  同時に私は、いじめっ子もいじめられっ子も同じ病に病んでいると考えている。そしてこの病の病根は、大人の社会にある。子供社会は大人社会の投影図だからである。

 このまま行けば、やがてこの国は、他人の痛みを思い遣ることを知らぬ醜悪な世代に占拠されることとなろう。
 今、この病根を断つ努力を尽くさぬ限り。

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