私の日本滞在は7年になります。日本の生活にすっかり慣れてしまった私は、日本とフランスとの比較となるとなかなか一般的に断定できなくなりました。慣れれば慣れるほど、日本の個別事情を十分に踏まえなければいけない、とわかってきたからです。
そんな私でもときどき、日本とフランスほど違いのある国も珍しいと思ったりします。フランス人が日本に適応馴化するのは、世界のどの国の中でも一番むずかしい国だという気がします。
というのも子供の時に教えられる価値観が日本とフランスでは180度違うからです。ここではすべてについて述べることはできませんので、一番代表的な価値観の違いを話してみます。
経済力という尺度で判断する日本人
先日の新聞にのっていた、一人のイタリア女性の日本に対する意見――「日本人というのは、その国の経済力によってのみその国を判断する傾向がある。イタリア人は怠け者。だからイタリア経済は‥…・、だからイタリア人は……」――。私もこのイタリア人と同意見です。
イラスト:大和功一
日本人はよその国や人を判断する場合に、とかく経済力という尺度で考えがちだと思います。
日本人の仕事への神聖な愛=Aまたは経済成長への並はずれた競争心は私にとっては一種の“狂信的宗教”のように思います。
一生懸命働くということが悪いことだなんて言うつもりは毛頭ありません。反対に日本人が仕事好き
であるために良い面が日常生活に数多く反映されています。
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サービス業ではサービスが迅速でよくゆき届いていますし、お店なども遅くまで開いていて大変有難いと思います。その仕事に対する熱心さが日本を戦後わずかな期間で経済的に世界に類のない国に押し上げたと思います。そして現在、他の国々も日本の方法を取り入れようとやっきになっているのも事実です。
尊敬され愛される日本とは……
日本人が経済力によってのみ他の国から尊敬され愛されると考えているなら、それは間違っていると思います。
私が一番好きな日本の面というのは、文化に対して注いできた情熱です。決して経済的な強さではありません。経済的利益のみを追求している日本というのは、非常に悲しいものに思えます。
日本人は、なぜ外出が少ないのでしょう?
フランス人の日常生活にくらべ、日本人の生活は、休みが少ない。費用がかさむということで外出もままならないのか、大変単調な生活に見えます。
昨今のレジャーブームでだんだん変わっているようですが、それでも非常にのんびりした変化です。日本人は仕事や会社を離れると、その存在そのものが危ないと感じているようにも思えます。
自分の時間にもっと情熱を
日本人は、仕事に対すると同じくらい自分の時間に対しても情熱を注ぐべきではないでしょうか――。
小さいことかも知れませんが、町の中にもみんながもっとゆっくりできる場所、例えば日本に大変少ないベンチとか休憩所とかをもっとたくさん作ったらどうでしょう?
そうすれば、体も心もくつろぎ、自分の人生を少しは考える余裕も生まれるではないですか。
せめてこのお正月くらいは、ごゆっくりとネ……。
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