編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.426 2014.12.23  掲載

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 鐘紡社長・伊藤淳二家



  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和56年3月1日発行本誌No.4号名「椿」 

 
  取材・文:浅野桂子(菊名 学生)  写真:川田英明(日吉)

  芸術性あふれる
  
鐘紡社長の伊藤淳二家


長嶋茂雄さん宅真向かいの広いお屋敷


 田園調布駅の西口から歩いて5分、鐘紡社長の伊藤淳二さんのお屋敷があります。
 白い鉄筋の2階建てのお宅は高い木の門と垣根で道路からはほとんど見えない。

 写真を撮ろうと、真向いの、あの長嶋茂雄さんのお宅の門の前からカメラを向けてもダメでした。


本と絵がいっぱいの社長さんの書斎

 

  絵がお好きな社長さん

  門からは白いタイル張りの幅広い道がつづく。
 玄関に足を踏み入れると、奥様の笑顔とたくさんの絵が私を迎えてくれました。
 絵の多いお宅だなあ、というのが私の第一印象。それもそのはず、社長さんは絵画、彫刻、音楽、映画の愛好家で、若い頃画家になろうと思われたほどの方なのです。鐘紡は会社としても東山魁夷画伯の絵を収集、それを一番たくさん持っていらっしゃるそうです。
 東山画伯の絵が好きな私は、すっかり感激してしまいました。
 芸術を愛する社長さんは、それをお仕事にも生かす。化粧品の広告など、最後の段階で社長さん自身がチェック、時には担当者たちが最後までしぼってきたモデルを変更させることもあるそうです。
 カネボウ化粧品の広告があんなにきれいで上品なのは、きっと社長さんのお若い時から培われた美的感覚によるのでしょう。
 

         夫婦分業システムと思いやり



 社長さんは常に若い人と接することを心がけていらっしゃる。若い人たちの気持ちを的確に知っていないと、会社が伸びなくなることと商品の対象が20代から30代の人たちだからという。
 ご子息方とサイクリング、バッティングセンター、サウナ、演劇鑑賞などによくいらっしゃるのも、そのためなのでしょう。
 2人のご子息はご長男が社長さんとともに慶応OB、ご次男が田園調布の高校3年、どなたも東横沿線とはなじみ深いようです。
 社長さんは東京と大阪を往復される忙しい方。仕事と家庭の両立はどのようになさっているのでしょうか。
 
 「私は社長になって13年目ですけど、私生活は全くありません。子供の成長期には、家庭と会社という二者択一のケースがときどき起きます。そんな時でも私は、会社の方を優先してきました。今の日本は、社長に何もかもかかりすぎ……。結局、私は家庭的には落第ですね。
 ウチでは完全な夫婦分業システム、私が会社、家内は家庭と……」。家庭担当の奥様のご苦労をうかがいたいと思いましたが、あいにく所用で外出。でもハスキーボイスのご長男がお話に加わって、
「ぼくは、土日のどちらかは空けるようにしているんです。父が所在無くしているといけないので……」
 私はこのお言葉に心を打たれました。そしてわが身を反省しました。日曜日はご家族で社長さんを一週間のビジネスの緊張からほぐそうとなさっているお父様思いの温かいお気持――。ご立派なご家族、いい家庭だなあと思いました。


玄関先で社長さんと記念写真
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