
師岡熊野神社本殿 |
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東横線大倉山駅から徒歩10分、綱島街道を越えた所に、歴史の流れにひっそり建つ熊野神社がある。港北区にこんな由緒のある神社があるのかと驚く。
ここは、今から約1250年程前、原始林におおわれていたこの辺りに神木である梛(ナギ)の木の室に全寿仙人が住んでいて、神のお告げによって開いたという古い記録にある。
仁和元年(885年)、光孝天皇の勅使に関東随一大霊験所熊野宮≠賜わり、今日まで長い歴史を持っている古い神社である。
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1千年余続く吉凶占い、筒がゆ神事
ここには、いのち≠フ一字ずつを頭文字にもつ片目の鯉の伝説をもつ「いの池」、一度も涸れたことのない「のの池」、不気味な物語のある「ちの池」がある。永年伝わる数々の特殊神事の中に筒がゆ≠ェある。
1月14日の早朝寅の刻、のの池の水を茶腕一杯くみ米1升と27本のヨシで作ったすだれと椰の葉5枚を釜に入れ、境内で正月のお飾りを燃やして粥(かゆ)を炊く。 |
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筒がゆ神事
宮司がヨシのすだれを釜の中から取り出すところ
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夕方、宮司のお祓い、祝詞の後、ヨシのすだれを粥の中から取り出し一本ずつ切り開き、ヨシの筒の中に入った米粒の量の多少により、その年の穀物の収穫、天候など27種類の吉凶を占うものである。
昔は農民が種蒔きの参考にしたそうだ。今年の穀物の運勢はまあまあ。天候は昨年に引き続き冷夏、世の中の情勢は3分と近来にない卦が出て今年もまだまだ不景気風が吹きつけるか――。
境内でフーフーと粥をすすり、無病息災を念じたが、村上天皇の御代から始ったこの祭事も今年で1032回を数えるそうだ。有為転変の長い歴史を境内の古木はどんな思いで眺めているのであろうか、問いかけてみたい。
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沿線のオアシス「市民の森」オープン
横浜市では「東横沿線に市民の森を」という地域の人たちの願いで「熊野神社市民の森」を昨年オープンさせた。
面積4ヘクタール、散策道約1キロ、熊野神社、杉山神社の背にひかえる鎮守の森を利用したもので標高10メートル〜40メートルの丘は大変眺めが良く、自然の地形をそのまま生かし、広場や休憩所にはベンチやテーブルを配している。
神社にお参りし、小鳥のさえずりに耳を傾け、樹齢600年の大木の中をかいくぐり、束の間のオアシスを求めることも多忙な現代人には必要なことだろう。
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イラスト:浅野佐多子
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