編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.421 2014.12.17  掲載 

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お風呂探訪
中原区編



  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和55年12月1日発行本誌No.3 号名「柊」

   
 新丸子・武蔵小杉・元住吉

 7軒の銭湯巡り

銭湯は、かつて町のコミニユティの原点であった。銭湯を私たちは探し歩き、誌上に紹介してきた。

時あたかも、東京都でも行政の施策としてお風呂屋さんを人と人との心のふれあいの場として復活させる動きがある。

 今回からマンガ家・畑田国男さんが、私たちと一緒に新丸子、武蔵小杉、元住吉の3駅周辺を探訪することとなった――。







 取材:吉谷恵美子・内田桂子
 題字・イラスト:畑田国男
  マップ:大和功一



踊る人に、歌う人ありの舞台。食べることと話すことに忙しいお座敷

  丸子温泉で


NO.1

  まずは新丸子駅から徒歩2分の「丸子温泉」へ。

 常連の間では「黒湯」と呼ばれるここのお湯は、160メートルの地下から汲み上げている天然ラジウム鉱泉。胃腸病、神経痛、リウマチなどに利くというので、遠路はるばる足を運ぶお客さんも多いとか。
 2階の休憩所では、飲めや歌えやの宴たけなわ。あいまに何度も湯船につかって、1日いても、なんと500円。
 ゆっくりしたいのは、やまやまですが、このへんで次へ行くとしましょうか。


NO.2

  丸子温泉を背に、右手の踏切を渡り歩いて3分で「八幡湯」に到着。

 「身体の不自由な方を、多い時は3組ほど営業時間前に入れてあげてますが、その人たちがとってもいい笑い顔をするんですよ。きっと気持ちがいいんでしょうね」とご主人。

 天然ラジウム・赤外線・バイブラのお湯も身体の回復に効果大。毎日お昼頃にはお湯が沸いている。料金も−般と同じ。

 暖かいご主人、奥さんの人柄に触れて身体ばかりか心までも暖まり、ホンワカ気分で八幡湯を後にしました。



お体が不自由な方は営業時間前に面倒見るお風呂屋さん

NO.3

  さて3番手は、武蔵小杉、向河原、どちらの駅からでも徒歩10分の「山王湯」へ。

 昔は文学少女だったという奥さんが、「特別なことは何もないけれど、いつも清潔に気を付けています」と話してくださいました。なるほど、床がピカピカ、とても印象的。

 〈長年にわたり保健衛生に寄与した〉ということで川崎市内で軒だけという名誉ある表彰も受けました。


NO.4

 
東横線のガードをくぐり、南武線の踏切を渡ってやってきたのは、武蔵小杉から徒歩5「京浜浴場」

  片手に赤ちゃん、片手に荷物のお母さんには、うれしい自動扉が迎えてくれます。2階は囲碁将棋の「天狗クラブ」になっていて、ご主人の話では日曜日、手ぬぐい片手に2階にくる常連も多いとか。勝負に熱中し、お風呂に入るのが遅くなっても大丈夫。仕舞湯まで綺麗です。


NO.5

 
京浜浴場前の通りをもう少し進むと「今井湯」です。

 建物の修理、ペンキの塗りかえをこまめにしているだけあってなかなかきれい「裏千家のお教室」を開いているので、まずお茶のお稽古を、そしてお湯につかって、しびれた足を思いっ切り伸ばす。う〜ん気分最高!


NO.6

次は労災病院側に出て、元住吉では一番古くからあるという元住吉駅から1分の「末広浴場」へ。

  こちらのご主人の浴場観は「銭湯は町のシャワーであれば良い」。そのためあれこれ設備に凝ることはない。裏に回ってみてびっくり!
 居間には亡くなった父上が、趣味で集められたという骨董品が山のよう。中でもタバコ入れとキセルは1000個以上もあるとのこと。事前に連絡すれば見せてくださるので、興味のある方はどうぞ。




和室付きの家族風呂が11室も

NO.7

 
再び線路を渡って4分ほど行くと「松の湯」へ。

  浴槽、洗い場すべて御影石というデラックスさ。にもかかわらず産業廃棄物の材木の古材を刻んで燃やすので燃料費がタダ、驚くような低料金、大人150円、中人50円、小人30円。

  2階は和室付きの家族風呂が11あり、家族水いらずで楽しめます。料金は、1時間大人500円、中人100円、小人50円です。



  以上の「お風呂探訪」情報は、今から34年前に取材したものです。上記7軒のお風呂屋さんも世代交代などで転廃業したりしています。予めご了承ください。
 また、後継者ががんばって現代に対応し発展しているお風呂屋さんもあります。7軒中の1軒には、私は今も時々“内風呂”に飽き足らず日吉から温まりに行きます。
                                       岩田忠利

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