編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏

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樹木
 
駅名の由来@
 

 
 大晦日の光の祭典 建功寺萬燈除夜

                       益田 勲(横浜市神奈川区神之木町)
                                                 NO.391 2014.11.22  掲載 

     
曹洞宗 建功寺
(横浜市鶴見区馬場町)


           
幻想的な萬燈除夜……


  曹洞宗の建功寺は、本山の総持寺と同様に由緒のあるお寺さんです。室町時代からあるようです。馬場町はその昔、諏訪氏という豪族がおり寺尾城址が残っています。

 住職は造園家としても知られる

 住職、枡野俊明さんは造園家としても有名で、NHKなどのメディアに取り上げられることが多い。その時は宗教家ではなく、アーティストとして出ておられ、ユニークな人だなあと思いました。
 鶴見の駅ビル「
CIAL鶴見」(横浜市鶴見区鶴見中央)の屋上にも、ダイナミックな日本庭園を造られています。寺院や神社からの依頼も多いようですが、ホテルや公共の会館、海外の造園も手掛けているようです。

 さて、大晦日の夜です。ご家族連れの方々が建功寺への道を歩いて行きます。時折、建功寺の梵鐘の音が聞こえてきます。
 ようやく、山門にたどり着くと、暗い闇の中に仄明るい無数の明かりが足元を照らしています。斜めにそぎ落とした20センチほどの太い竹筒に、お燈明が灯されています。それ以外の照明は使われていません。

 幻想的な光に導かれて、階段を登ると山門が浮かび上がってくる趣向です。ところどころに、お燈明を持った若い人が「こんにちは」とか、「よくいらっしゃいました」とか声を掛けてくれます。多摩美術大学の学生さんだそうで、例年の行事として参加しているようです。住職の枡野明俊さんは、多摩美術大学で「造園」を教えているので、教え子たちが手伝いに来ていたんですね。

 あまりの暗さにカメラの性能が追随せず、見た目の美しさは伝わりません。この行事は「萬燈除夜」と呼ばれています。


 山門までの階段が35度くらいの傾斜で、登りきるのがとても辛い。さらに進むと、参道にアーチ状に覆っている木々の枝に、お燈明を吊るし光の道が出来ています。今まで足元だけの明かりが急に頭上に広がるので意表を突いた趣向です。
 「おっ、綺麗だ!」という声が参詣客の中から聞こえてきます。お参りの人が多いのと、この風情を楽しむ人がいるので、歩みは遅々として進みません。

 しばらく、こけつ、また、ころびつ歩いていくと、分岐の道が見えてきました。片や鐘楼に向かう登り道です。鐘楼は竹林の中にあり、大きな岩が枯れ山水のように配置されています。鐘楼に向かう階段の途中にお社があり、「諏訪神社」ではなく、「白山神社」と読めます。

 ようやく開けた場所にたどり着き、本殿が正面に見えます。お賽銭を投げて、一年の無事を祈ります。

 このお寺さんは諏訪氏にちなんだのか、諏訪神社で用いている「梶」紋でしたが、少し形が違うような。白枠の中の左が一般的な梶紋で、右が諏訪神社の梶紋です。諏訪神社のものに形が似ていますが、葉の形、根の形が違います。諏訪氏は新田氏なので本来なら、丸に一つ引両ですが、何故か梶紋でした。

 さて、入り口で頂いたお燈明は、ここで水盤の中に入れて帰ります。なんだかヨーヨー釣りの縁日のようでした。
 帰りの道はまた違う道を通るようになっており、そこに石仏、道祖神のようなものがあります。それにもライティングが施してあり、いかにも一年の計が始まる感じです。

  室町時代から現代まで、寺院や庭園を残していくのは、多くの人々の努力の賜物だと思います。そこに新たな意匠を凝らし、甦らせるのも人の業ですね。

 建功寺は東横線妙蓮寺駅から“水道道”沿いに歩いて15分ほどです。今年の大晦日、お参りして良いお年を迎えたらいかがですか。




建功寺境内
2012年1月1日撮影:入口でお燈明を買います




         萬燈除夜
2012年1月1日撮影:階段の足元に燈明があり,竹なので清々しい感じです




萬燈除夜
2012年1月1日撮影:頭上にあるお燈



        鐘楼
2012年1月3日撮影:竹林の中にあり風情ひとしお




梶紋
2012
年1月1日撮影:幔幕の梶紋が当寺のもの




水盤
2012年1月1日撮影:ご縁日のように楽しいです
 
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