「だまれっ! 秋刀魚をこれに持て、目通りを許すぞ」
家来は、大きな皿にいっぱいの秋刀魚と大根おろしを添えて持ってきた。将軍は、
「うむ、美味である、美味である」
と、一人で全部食べてしまった。
「余は、かようなものを食したのは初めてじゃ、これより屋敷へもどり、三度三度秋刀魚を食すぞ」
屋敷には、秋刀魚はおいていないから魚河岸へ使いを出して買ってきたが、この強い油は殿様の体に悪いと、蒸して油をぬいたバサバサした、そして、小骨がのどにささっては大変と骨をぬいたくしゃくしゃのものを「恐れながら」と、出した。
殿は食べたがうまくない。で、どこから求めたかをきくと、魚河岸と答えた。
「ならん、秋刀魚は目黒じゃ」と、いったそうな。はい、おそまつさま。
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