世間体か、ロマンチストか
それと比べて日本では、テレビ、雑誌、日常会話――どこを向いても結婚、結婚、結婚で、〝形″つまり、セレモニーの方も重要視されていますね。日本人は世間体を気にするからそうなってしまうのだ、とよく言われます。
もっともな説明だと思います。でも、私がいつもびっくりするのは、世間体を気にしなくてもいいはずの芸能人まで、ちゃんと結婚し、たとえ一年後に離婚することになろうが、豪華絢爛たる披露宴を行うことです。フランスでは、ちゃんと結婚しているスターなんて、五本の指で足りるくらいの数しかいないんですよ。
実のところ、一般的に日本の若者がこれほどまでに結婚やそのセレモニーに執着しているのは、彼等がロマンチストだからではないかしら。純白のドレスの花嫁、感動的な両親への花束贈呈、情熱的に輝く太陽のもとでのハネムーン――現実的なフランス人だったら、このためにサイフが空っぽになると思っただけで、夢心地からさめてしまいます。
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日本女性の無邪気な結婚観
フランス語を教えている関係から、私は日本の若い女性と常に接していますが、彼女たちを見ていると、売れ残ることに恐怖を感じているようです。また、それと同時に、美容器具の使用前・使用後みたいに、結婚によってすべてが変わり、結婚後の生活は、希望と幸福に満ち溢れていると信じ込んでいるようにも感じられます。彼女たちが、「もう働きたくないから結婚したい」なんて言うのを聞くと、その無邪気さにびっくりさせられてしまいます。現実の結婚生活ってそんなに甘くないと思うのですが……。
花嫁短期講座――最初の驚きがすぎると、私はこの広告がなんだかいじらしく思えてきました。結婚前の女性が一生懸命こうした講座で学ぶのもわかるような気がします。
私は、料理や家計簿のつけ方をはじめ、結婚したら必ずやらなければならないことすべてを、現場で身につけました。それは常にたやすかった訳ではありません。こうした講座で習っておけば、もっといいお嫁さんになれたかもしれませんネ!
社会の変化を眺めていると、思いもよらないことが起こるので、面白いですね。
数年後、日本の若者は、フランスの若者のように現実主義者になってしまっているでしょうか。それとも、フランス人の方がまたロマンチストに戻ってしまっているでしょうか‥‥‥?
イラスト:石橋富士子(イラストレーター・横浜)
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