編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
編集:岩田忠利     NO.254 2014.9.27  掲載 

        画像はクリックし拡大してご覧ください。


 花と緑に出合う 大倉山

    桑原良雄(キリンビール元副社長


  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:昭和58年3月1日発行本誌No.15 号名「桜」

   


     
 起伏ある地形、豊富な緑


 住まいは東横線の大倉山、というとたいてい「よいところにお住まいですね」という言葉が返ってくる。我田引水ではないが、住宅地としての大倉山は、よいイメージを持たれているようである。
 一口に大倉山と言っても、大倉山という町名は(★最近「大倉山」が町名になった)ない。戦前から丘の上に大倉精神文化研究所があり、その後大倉山公園(梅林)が生まれ、駅名が太尾から大倉山と変わった。それから大倉山駅を中心とした一帯が「大倉山」と呼ばれるようになったものと思われる。

 大倉山の特徴は何と言っても地形的に起伏があり、坂道が多いこと、自然の緑が豊富に残っており、数多くの種類の野鳥が訪れることなどであろう。
 私がこの地に移り住んでから
20年近くになるが、この地形的な制約もあって、大曽根地区の住宅地の開発は進んでいない。基本的にはあまり変わっていないということてあり、住居を持つ者にとっては誠にありがたいことである。変わったと言えば、道路の舗装が進み、細い道でもほとんど土の上を歩くことがなくなった。これは雨の日など好都合であるが、車の通行が増えて必ずしもよい面ばかりではない。

 しかしながら最近の大倉山に大きな変革が二つある。その一つは大倉山駅の大改造工事である。2年がかりで目下進行中であり、近くその偉容をわれわれの眼前に展開するであろうと大きな期待を持っている。
 もう一つは、先年港北区役所がこの駅近くに移転してきて、豪華な建物が綱島街道沿いに建設されたことである。これに伴い、付近の様相も一変した。駅から綱島街道までの商店街は拡幅され、その名もレモンロードと命名された。

 大倉山には丘を挟んで大倉山商店街と大曽根商店街が相対峙している。ともに古くからの店が多く、住宅街と持ちつ持たれつ一体となって好ましいコミュニティーを形成している。また、大倉山には児童小公園が多く、駅から1キロ以内に大小4つの公園があるので、子どもたちの遊び場には恵まれている。



     私の大倉山散歩、梅林コース


 
さて大倉山駅から徒歩でこの大倉山一帯を散歩してみることにしよう。
  最もポピュラーなコースは、駅の西側の坂道を大倉山公園(梅林)へとたどる道である。坂をのぼると間もなく左側の石段の上に、大きな木立に囲まれて大倉精神文化研究所の古色蒼然たる建物がある。現在は禅関係その他の蔵書が多いと聞いている。この一帯は市が買収して整備することになっているというが、現在の自然環境を活かしたものにしたいものである。

 そこから間もなく公園の入口に出る。この辺りは馬の背のような丘であるので左(新羽方面)、右(綱島方面)に眺めがよく、夜景も美しい。公園は東急電鉄(★現在は横浜市)の所有で、梅林は有名であるが、最近は樹木も傷んできたようで往年の趣はない。しかし梅のほか桜の古木も多く、見事な花を咲かせてくれる。また、つつじやさつき、椿も多いので、3月から5月まではいずれかの花が目を楽しませてくれる。これらの花は密生しているのも美しいが、個人の住宅の庭先にただ一本美しい花を咲かせているのをはたから眺めるのもよいものである。
  公園を縦に突っ切って道路に出ると文珠堂の社と龍松院の本堂が並んでいる。龍松院は前後に美しい松林の丘を控え、豪壮なたたずまいである。

 このまま公園に引き返してもよいが、更に進むと右側の道端に一つお地蔵きんが淋しく立っている。ここを左に折れてまっすぐ進むと大倉山商店街に出られる。この途中、路地を曲がって太尾神社の前を過ぎ、100bほど先の石段をのぼると、再び大倉山公園の入口に出る。ここはとても静かで、ひなびた小径である。帰りは往きの道を戻らず、大曽根第三公園の前を通り駅に出るとよい。



大曽根台の高台にあるご自宅の庭先で

       撮影:岩田忠利


    大倉山散歩、熊野神社往復コース


 
第2のコースは駅から熊野神社往復のコースである。

 駅前のパチンコ店の横丁をのぼり、綱島街道に出て左へ
50bぐらいで右に折れる。すると間もなく左側に法華寺、並んで熊野神社がある。
  道路の左側には「いの字の池」があり、神秘の水をたたえている。左の石段をのぼると社殿があるが、裏山は市民の森の一部となっており、綱島方面への眺望が開ける。この周辺も木立が多く、野鳥のさえずりがよく聞ける。帰りは境内の横に出て坂道をのぼり、左折して三菱重工大倉山病院の前を通れば、綱島街道に出られる。ここから大曽根第二公園の横を曲がって駅へ戻るのがよいだろう。

 大倉山公園、熊野神社どちらのコースも駅を出て戻るまで、ゆっくり歩いて30分から40分みればよい。2つのコースを合わせて回るのもよいかと思う。



イラスト:はらだたかこ(大口)

「とうよこ沿線」TOPに戻る 次ページへ
「目次」に戻る