編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
編集:岩田忠利     NO.237 2014.9.21  掲載 

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 放置ペットを保護する女性獣医 


  ――大倉山動物病院の茂木知子さんーー


  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:平成11年6月15日発行本誌No.72 号名「椏
(みつまた)

   文:安田浩子
(主婦・大倉山)

   


    さまざまな放置ペットを保護し介護


 横浜市内初の女性獣医として茂木知子さんが動物病院を開業して25年。その大倉山動物病院は大倉山公園の梅林のふもと、住宅街ながら樹木が茂る自然に恵まれた場所にあります。

 周囲は樹木の多い丘陵地でペットを捨て、放置し易い場所なのか、傷ついた動物や飽きたペットを捨てる人がじつに多い。


 普段は動物たちの診察をされている茂木知子先生ですが、無責任な飼い主によって捨てられたペットの保護もされています。広い敷地内の病院の奥には、放置されたさまざまな動物たちが暮らしています。ちょっとのぞいてみましょう。

           ◆

 まず登場したのはアライグマの「マック」。10キロはありそうな体をユサユサさせながらのお出迎えです。上手に手を使って食事をするところが何とも愛らしく、なんと好物はピーナッツクリームのたっぷり入ったサンドイッチとドーナツ。先生いわく「アメリカ人(?)だから(笑)」とか。ちょっと太めで愛矯たっぷり!

           ◆

 
次にお目見えしたのは、カミツキガメ(肉食)とロシア陸ガメ(こちらは草食)。どちらも体長30センチはある大きな亀。とくに前者は凶暴で、噛む力が強く、危険なので要注意! いったい何年生きているのか、先生にもわからないそうです。動きは前者は速く、後者はスロー。どちらも目つきがするどい!

           ◆

 
3番目にイグアナくんの登場。とにかく尻尾が長く、体長60センチはあると思われる大物です。変温動物のため寒さに弱く、冬はヒーターでの管理が必要という手のかかるコですが、逃げ足だけは速いそう(笑)。その姿、残念ながら見ることはできませんでしたが想像するとなんとなく笑ってしまいます。好物はチンゲンサイ。

 ふと視線を感じ、振り返るとイグアナくんに見つめられてる……そんなこともしばしばとか。イグアナくん、きみはそのつぶらな瞳で人間を見て、何を感じているの?




サンドイッチとドーナツが大好物のアライグマ



南北アメリカ生息のカミツキガメ。名前のとおり凶暴で動きが速く噛みつく肉食の大型亀。この危険な輸入亀をどなたが飼っていたのか、捨てられていた



こちらは草食のロシア陸ガメ。動きは鈍いが眼付は鋭い



      ペットはかわいいだけではダメ。責任を持って飼うこと


 一番長くここで暮らしているのはカラスの「カァ子」。先生とはもう10年以上のつきあいだとか。そのカァ子は名前を呼ぶと、なんと返事をするのです。

 「カァ子!」「カアー」……、「おいで!」「カアー」……といった具合。カラスは頭がいいと聞いていましたが、これにはびっくり。この日はご機嫌ナナメで見せてはくれませんでしたが、ふだんは、ドッグフードを一粒投げるとくちばしでキャッチする、という芸もできるそう。さすが! カァ子のほかにも、傷ついて飛べないカラスが2羽いました。

                 ◆

 タヌキの「ばあちゃん」は、あまりよく目が見えません。病気が治って山に帰っていったタヌキもいるので、ここにいるのは今では、ばあちゃん1匹だけ。
 大倉山では、しばしば野生のタヌキを見かけることができるのですが、先生いわく「その数は圧倒的に少なくなりましたね。交通事故に遭ったり、病気になってしまったりで……」
 タヌキの山を守り、自然と共存できる方法を探し出していきたいですよね。残された自然を大切に……、「ばあちゃん」がそんなことを教えてくれたような気がしました。

                 ◆

 少し奥に行くと赤いトサカのシャモが2羽。ちょっと珍しいこの鳥、ニワトリの仲間ですが、以前は闘鶏用にも使われただけあって鋭い目と大きな蹴爪を持っています。2羽はケンカしないよう、少し離れた所につながれています。

 「ペットはかわいいだけではダメ。途中で手放さず、責任を持って飼わないと……」
 先生の言葉とともにアライグマのマックに見送られ、その場を後にしました。

 


体長60a、好物がチンゲンサイというイグアナくん

 


10年以上ここで暮らし、「カァー子」と呼べば「カァー」と応える





視力が衰えたタヌキの「ばあちゃん」





ケンカぱやいシャモは、他のシャモと離して管理

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