編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
編集:岩田忠利      NO.235 2014.9.20  掲載

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 大倉山のムツゴローの小動物園

 ――横浜市鳥獣保護員・野々山録郎さん宅ーー


  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:昭和63年12月20日発行本誌No.66 号名「柑」
   文:佐藤由美
(日吉)
   


  負傷の動物を連れ帰り治療する


 ピッキー……(室内の鳥のさえずり)。
 「今のは、ジロウ。鳴き声でわかるんですよ」
 5年前、親戚の子供が、まだ小さいウズラのヒナを「おじさん飼って!」とばかりに持って来たもの。
 以来、ここの住人。3羽なので、上から順にイチロウ・ジロウ・サブロウと名付けた。

 横浜市鳥獣保護員の仕事がら、傷ついた動物と縁が深い。動物園で引き取らないような動物はすべて自宅に連れ帰り、介抱する。

「治せるものは治して、また逃がしてやる。そうできない奴らもいるんですよ」



横浜市鳥獣保護員の野々山録郎さん



ウズラのジロウ



ベニ・コンゴー・インコの「ヤヨイくん」



右眼の負傷が治ったカラスの「モモエちゃん」



アヒルの「ガー子」



朝早く時を告げる「トキオくん」



  誠意を持って接すれば相手も分かる


 野々山さんの家は、まさに私設動物園。それでは、何匹かに登場してもらおう。

 「ヤヨイ、ヤヨイくん」野々山さんがそう呼ぶと、大きなベニ・コンゴー・インコが、ゆっくり羽を拡げる。
 「こいつぁ、東大和市で助けたんだが、流れ者だね。いろんな目に遭ってきたんだろう。たまに、スワヒリ話で何か言ってますよ」
 始めは狂暴で、噛みつかれそうになった。今でも野々山さんにしか、心を開こうとしない。
 
 動物を仕込むというのは、精神な面が大きい。こちらが誠意を持てば、相手にもその心が伝わるという。外で会う様々な動物も野々山さんを見ると、必す異変が起こる。怒ったり、逃げたり、笑ったり。中には、あいさつに来る犬もいるとか……。

 「一年中、動物としゃべってばかり。モモ工、サユリなんて、美人の名をつけて喜んでいるんですよ」奥様の礼子さんはそう言って笑う。

 そのうわさの美鳥(?)モモ工には、こんなエピソード。
 師岡町の社宅からの通報で駆けつけると、右眼をぶら下げたまま、痛みに震えるカラスが一羽。かわいそうとは思いつつ、思い切って血に染まる眼をひきちぎり、連れ帰って自宅で手当てをしたという。
 もともと、カラスは頭が良い。今では、カタコトのことばもしゃべれるという。そのうち、野々山さん得意の、俳句でもうたえるかな。


  動物好きのちょっとした私設動物園


 ここに来れば、動物たちに会える。アヒル、インコ、ウズラ、カモ、カラス、チャボ、サギ、ウサギ、シェパード、セッター、多い時は、20種以上。近所の子供たちがお菓子やパンや野菜などを持ってやってくるそうだ。

 むかし狩猟をしていたことから、毎月雑誌「狩猟会」の狩猟教室に、エッセイを載せている。現在、犬の調教師(自称家庭教師″)として、街中をオートバイで走りまわっている。年齢は60代でも、肉休は20代なのだそうだ。

 とにかく、根っからの動物好き。書籍類も言うまでもなく、動物番組のテレビがあると、夢中になってかじりつく。この間は、何も耳に入らない。
「ムツゴロウの畑正憲さんに、弟子入りしたいなあ」と溜息交じりに一言。いえ、いえ、どうして。今では“大倉山のムツゴロー”とご近所では評判である。
 「ピッキー……」。また、ウズラのジロウが鳴く。

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