編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
編集:岩田忠利     NO.232 2014.9.18  掲載 

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  盲導犬の母、ルナ

 ――飼い主:白楽の岩井忍さんーー


  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:平成2年10月1日発行本誌No.51 号名「椰
(やし)
   取材・文:中村和子
(白楽)   写真:岩田忠利
   


   視覚障害者の強〜い味方 盲導犬の母・ルナ

  白楽は白幡池の上、高台の閑静な住宅地。ここの一角に近所の子どもたちが集まる家があります。



おっぱいの時間ですよ!」
一列に並んだお行儀のよい6匹の子犬たち



 「あら、可愛い子犬たちね〜!」
 道ゆく人たちが足を止める。誰でも抱きたくなるような、丸々太った子犬たちが6匹。この子犬は427日生まれ、ラブラドールという種類の盲導犬として役立つ頭がよく、人の言うことをよく聞く賢い犬です。

 飼い主は港北区篠原台町の主婦・岩井忍さんです・・・。

 子犬たちは2か月間親犬ルナ≠ニ一緒に生活した後、飼育奉仕者の家に預けられます。
 子犬たちの兄姉犬は、アイメイト協会で指導・訓練を受けた後、アイメイト(盲導犬)として全国各地で視覚障害者の自立の手助けをしています。




   ルナの子どもたちが全国で活躍する便り


 
「もう少しでお別れなの!」
 と岩井さんは寂しそうに話しながら、全国で活躍する巣立っていった犬たちの写真を見せてくださいました。どの写真も、ご主人の視覚障害者と犬とが愛と信頼で結ばれ、幸福そうに寄り添って歩いています。
 こうした便りを受け取ったとき、岩井さんは別れの悲しみも一遍に喜びに変わってしまうという。

 岩井さんが盲導犬を飼うようになったのは今から19年前。ペットとしてラブラドールを飼い、子犬を出産させたときから。そして子犬の中から2匹をアイメイト協会に贈ったのが、同協会とのお付き合いの始まりだそうです。



視覚障害者の手助けで活躍中のルナの子ども




   英国から来日した当時のルナ


 現在の母親ルナは、1985年はるばるイギリスから海を渡ってやってきました。頭脳明晰、仕事好き、繊細さと大胆さを兼ね備えた素質ある犬として数多くの中から選ばれたのでした。

 来日当時はもちろん日本語が全然分かりませんでした。テレビに映るサッチャー首相の演説だけは耳をそば立て、凝視するのでした。でも今、英語しか通じなかったルナは、すっかり日本語をマスターしたようです。

 「八百屋さんが来たら教えてね」と岩井さんが頼むと、トラックの音をいち早く聞き分けて、遠吠えのような異様な鳴き声で教えます。
 じつは、タケノコとレタスが大好物のルナは八百屋さんが来るのを何よりも楽しみにしているからでもあるのですね。

 日頃岩井さんに甘えていたルナも子供が生まれると途端に、母性愛を発揮して終日面倒を見る子育て上手な母親に変身します。こうしてルナが手塩にかけて育てた盲導犬の子犬が18匹。そのうち、すでにアイメイトとして活躍中の成犬が7匹、只今訓練中の幼犬が11匹も。

 視覚障害者にとってルナは、人間の力では到底及ばぬ蔭の強い味方なのです。


 


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