編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢
編集:岩田忠利      NO.220 2014.9.14  掲載 

        画像はクリックし拡大してご覧ください。


           



 オウムの太郎ちゃん

   ――港北区富士塚の高木さん宅ーー

  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:昭和62年3月10日発行本誌No.37 号名「柚」
   
文・斉藤かすみ(向河原)/ 取材・井道由(元住吉)
   


高木さんの肩に乗ってご機嫌の太郎ちゃん




  東横線で通勤(?)していた太郎ちゃん


 「高木さんち(家)のオウムの太郎ちゃんって、高木さんの肩に乗って、外に行くにもいつも一緒だったのよ」とご近所のおばさん。

 この太郎ちゃん、読者の中にも、知っている人がいるのでは? だって、高木さんの勤める野毛公園前まで、数年前まで一緒に東横線で通っていたんですから。

 寒い時はコートの中に太郎ちゃんを入れていた。コートの下から「ウフフ・・・」「太郎チャン」「コンニチハ」と声がする。おやっと振り向く周囲の人々に、顔を出してあいさつする茶目っ気ぶりも見せていた。




     人間のような暮らしぶり

 その太郎ちゃんが、世間の目に触れなくなったのは、高木家の長女・りえ子さんが、結婚・出産後、再度ご両親と同居を始めたころ。新しく家族に加わった、りえ子さんのお子さんに焼き餅を焼く太郎ちゃん。

 危ないので籠に入れ、その後は一度も外に出していない。「アーア」と太郎ちゃんのがっかりした声。籠から出してくれないから、「アーア」ってわけ!

 以前はすっかり家族の一員だった太郎ちゃんは、まるで人間のような暮らしぶりだった。
 お母さんの腕を枕に布団の中で眠っていた。トイレも、ちゃあ〜んと自分で済ませる。りえ子さんを起こすのだって太郎ちゃんの役目だった。

 食べる物も一緒。好物は、チョコやケーキなどの甘いものや、玉子焼きとトロのお寿司。みんなと一緒にアイスクリームはスプーンで食べる。私たちの前では、ポッキーを片手でつかんでポキポキ食べてくれた。「お上手!」。



家族と一緒に朝食中。「オレの分まで食べるなよ」とお父さん


 困ったのは、お客様にお寿司をとって出した時など、相手構わず「チョーダイ!」を連発すること。
 れから、不思議なことに、好物の一つのスプライトを、目の前であの緑色のビンからコップにつぐと飲むが、見えない所でつぐと、「チガウ(違う)」と言って知らん顔。それに緑色のシロップを入れて出すと飲むんだって。色がわかるのかな。

 別れ際、「バイバイ」と話しかけたら片手をあげ、バイバイしてくれた太郎ちゃん。
 
 君は、自分がオウムだってこと、わかってるのかい?


           
 
「とうよこ沿線」TOPに戻る 次ページへ
「目次」に戻る