編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
編集:岩田忠利     NO.218 2014.9.13  掲載  

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 生い立ち異なる、茶色の雄犬3匹

 ――祐天寺・日吉・小杉の犬たちーー
                                                  

  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和60年9月28日発行本誌No.30 号名「楠」
  
文:杉村みゆき(学生 妙蓮寺)/写真:一色隆徳(学生 祐天寺)
   


 沿線にいろんな人が住んでいるように、ペット君もユニ−クぞろい。

 今回は、東京から祐天寺・一色さん宅のルッキー君、川崎から武蔵小杉・飯田さん宅の悟空君、横浜から日吉・小林さん宅のボビー君登場。

 偶然にもみんな茶色のオス犬です。




 

 狼みたいな狸イヌーー祐天寺のルッキーくん


 目黒区中町、一色 雄さん宅のポメラニアン、ルッキー君(オス)・12歳。
 散歩してたら通りがかりのおじさんに「タヌキかなあ、犬かなあ」と言われるとか。さっそく彼に会いに祐天寺へ。

 お父さんの雄(つよし)さんが、仕事先のお客様からいただいたというルッキー君。いま大学3年生の隆徳さんが、小学3年生のときです。「コロコロしててかわいくて、夜も抱いて寝てたんです。ふところに入れて育てたって感じです」とお母さんの章江(ふみえ)さん。おちゃめでよくパジャマのボタンをかじられたとか。

 ブラッシングや食事の世話などは、もっぱらお母さんの役目。お使いから帰ってきた時に喜んで飛びつこうとして、玄関の土間に落ち、脳しんとうを起こしたこともあるとか。飼主に似て(?)どうやらかなりのドジみたい。



ね、カワイイでしょ!
  


ルッキー君と一色さん一家









   ご老体の身で階段を上るルッキーくんは、おまわりさんが嫌い


 好きなのはドライブ。「プープー乗ってお山にいこうねって言うと、クーンと鳴いて首をちょっとかしげて、行きたそうな顔をするんです」とお姉さんの淳子(あつこ)さん。

 そのルッキー君、よくシャンプーされた感じの茶色いフワフワの毛からは、手も足も見えなくて、カワイイ耳だけチョコっと出てる。普通2、3キロのはずの体重が、5キロ。「座ってると、犬というよりフクロウかタヌキだろ」と隆徳さん。まるでこの筆者そっくりだと笑う。

 足が弱っているので、15センチ程の段も普通にしてては登れない。そこで、彼はまず後足を乗せ、前足で体を押すようにして登るのだ。だてに年は取ってないね。

 おまわりさんが嫌い(?)でパトカーの音を聞くと、狼のようにアオーンと遠吠えをする。タヌキそっくりのルッキー君が狼に変身する姿、マンガよりもおもしろそうね。

 12年間、家族同様に育ったルッキー君は、一色さんちの次男坊。うんと長生きしてほしいワンちゃんです。




  

雷が嫌いなチャウチャウ犬ーー日吉のボピー
くん



 日吉駅から7分、編集室からは1分たらずの小林力(つとむ)さん宅(港北区日吉)のポピー君(オス)は、昭和59428日生まれ。生粋のチャウチャウ犬。

 フサフサした茶色の毛、紫色の舌がチャウチャウ犬の特長。大きなぬいぐるみみたいなワンちゃん。「夏は皮膚病になりやすいので、毎日ブラシをかけます」とお母さんの京子さん。冬毛が抜ける時期には、クッションが作れる程だそう。

 取材のため小林さん宅の門の前まで来たら、ドロボウと間違えたのか(?)ガルル…と吠えた。立派な番犬だね。
 ところが一歩家に入ったとたん、親愛の情を示して、すり寄って来る・・・というより、飛びついて来るといった感じ。

 14カ月といっても、体重は20キロ。さすがに手ごたえがある。女の人が大好きで「お散歩中、慶応の女子大生なんかがカワイ! って言うと、すり寄って行くんですけどね。男の学生だと知らんぷりして、トットと歩いていくんですよ」とお父さん。
 「飼主に似てるのかしらね」と3女の育子さん。似てるかどうかは別にして、ボピー君はお父さんの力さんの健康に一役買っている。




ボピーくん、お得意のポーズ









家族といっしょに




   お父さんの健康管理に貢献するボピーくん、雷と雪が苦手


 「仕事でイラクに行ってたんだけど、現地じゃあずっと車を使っていたから、足が弱ってね。でも犬の散歩をするようになって丈夫になりました」とお父さん。散歩の時間になると、ワンワンと催促するとか。

 朝5時半と、夕5時の2回、慶応キャンパスの森あたりを我もの顔でカッポするボビー君、猫を見るとムキになって追い駆けようとする。「家では猫のチーコちゃんに遠慮して逃げ回っているのに」と隆子さん。ポピー君の気持ち、わかるような気がするね。

 体は大きいけど、まだ1歳。仕草がかわいくて、写真のように後足を拡げてベタッと座るポーズがお得意。「ティッシュを噛んで、まるめてポイってやるのが好きなんですよ」と長女の美和子さん。

 人気者のボピー君。苦手なものはなさそうだけど「雷が嫌いでね。8月の台風の時なんか、あんまり恐がるからついててあげたんです」と次女の隆子さん。ずいぶん蚊にさされてしまったと笑う。そのほか、雪なども恐がるそう。今年の冬は雪が降らなければいいけどね。



 

タレント性抜群の元野良犬――小杉の悟空くん


 
ドラマ化されそうな、ワンちゃんのお話。主人公(?)は、雑種、年齢不詳のオス犬通称「悟空」。本当の名前は、彼が教えてくれないからわからないのです。

 中原区市ノ坪の「江戸銀寿司」に茶色くて、大きなノラ犬が姿を見せたのは、2年前の初夏。
 「普通ノラ犬にエサをあげたりはしないんですけどねえ、体を折り曲げるようにしてすり寄ってくるものだから可愛くて、つい…」と奥さんの木島ヒサ代さん。ほかにも、近所の飲み屋『千枝』など、武蔵小杉の商店街ではちょっとした顔だったらしい。

 ところが34匹で群れを組むようになり、困った人が保健所に連絡。ノラ犬たちを繋いで、車を待っていたが、危険を察知した悟空君は、仲間の鎖を食い切って仲間を逃がしたのでした。
 ところが肝心の悟空君は保健所へ。



   近所の人たちの協力で保健所から救出された悟空くん


 「殺されちゃあかわいそうだってことになってね、近所のみんなで相談して、保健所から引き取ることにしたんです」と、江戸銀向かいの『フミ美容室』の飯田みつるさん。登録費用、注射代などはみんなで出し合ったのだとか。

 「保健所の人にね、『大きい犬だし、噛みついたって責任持ちませんよ』と言われたけど、放っておくのはかわいそうだから」と飯田さん。病気の時も医者にかけて、「幸せな犬ですね」とお医者さんに言われた。

 今、悟空君は中原区小杉町3-7の飯田さん宅にいる。朝の散歩は飯田さん、夕方の散歩は、『どさん娘ラーメン』の田中さん。彼にはご主人がいっぱいいるのだ。「散歩の途中、この犬をゴンって呼んだり、アカって呼んだりする人がいてね、事情を話すとみんながよかったねと喜んでくれるんです」と飯田さん。

 取材中、一度も吠えなかった悟空君は、犬の中でもピカイチのジェントルマンです。



小杉の商店街じゃ顔だったんだぜ!












 
   



近所の皆さんに囲まれた悟空


       
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