編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
編集:
岩田忠利
NO.215
2014.9.13 掲載
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わたしチャウチャウ
――学芸大学・青山家のベル子ーー
沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”
掲載記事:昭和55年12月1日発行本誌No.3 号名「柊」
文:久保島紀子
(日吉)
わたしが養女になった頃
「ライオンかな。クマかな」――。みんな私を見てそう言います。最近は巨人軍の王選手といっしょに私の仲間のチャウチャウ犬がテレビに出ているので有名になったけど、私が5年前青山さんのお父さんとお母さんのもとに養女に来たころは、散歩のたびに、私がチャウチャウ犬であることを説明するのがお父さん、たいへんだったみたい。
私の名前はベル。娘さんから青山のお父さんに、定年のプレゼントとして送られてから、お父さん
お母さんの本当の子供のように、ベル子ベル子、と可愛がってもらっています。
5年前、青山家の養女になった頃のわたし
日課は自分の好きなコースを選び、朝・夕・晩の散歩
私の一日は、朝の散歩で始まります。祐天寺駅コース、学芸大学駅コース、目黒不動コースと、私
はこの辺、とってもくわしいの。それは一日に、朝、夕、晩と3回も散歩につれていってもらえるか
ら。毎回、自分の好きなコースを選べます。でも、お父さんが「きょうは祐天寺の駅に行こうか」と
言えば、私はちゃんと祐天寺駅の方へ行く道を選ぶのよ。大好きなお父さんとお母さんの言うことだったら、人間の言葉でもわかってしまう。
散歩の間もずっと私に語りかけてくれるお父さんとお母さんだから、疲れているみたいだな、と思ったら、私もゆっくり歩き、お父さんが「あしたは会社お休みの日だからね」といえば、早くお父さんの顔を見たいのはやまやまだけど、いつもより遅くまで吠えずに寝かせてあげるの。
今までで一番うれしかったことは、おっぱいの所にできたシコリを取る手術をしたとき。8針も縫った私は痛くて悲しかったんだけど、雪も降り出すような寒さの中、一睡もしないで看病してくれたことがうれしかった。お父さんにふれていてもらうだけで、痛いけれども安心していられたの。お父さんたちの愛情は肌のふれあいだと思います。
お休みの日には、私の大好きなお風呂に。お父さんとお母さんにシャンプーで丹念に洗ってもらい、私専用のお風呂につかります。もう気持ち良くってうっとり、あくびがでちゃう。そして仕上げにリンスをつけて、あとはドライヤーで乾かす。美容院につれて行かれたりしないところがうれしい。お父さんとお母さんに洗ってもらえば、カットなんてしなくても、フサフサのきれいな私になれるもの。
日課は自分の好きなコースを選び、朝・夕・晩のお散歩
私の嫌いなものは、カミナリと花火。だから夏になるとたいへん。暑いのも苦手で私専用の扇風機まであるの。カミナリと花火のほうは、お父さんたちにそばにいてもらわないとタメ。ちょっとでも体にふれていてもらえば大丈夫なのだけど。
人間は好き。とくに人ごみの中が大好き。私の好きなお菓子屋さんも一度行けばもう覚えてしまう。中村屋のたまごパンには、わたし、目がないんです。
お父さんたちは、今私のお婿さんのことで悩んでいます。せっかくおなかを痛めるのだから、立派なお婿さんを探してあげたいと。こんなにも私のことを愛してくれるお父さんとお母さん。いつまでも元気で、ずっといっしょに散歩できますように。
暑い夏は、わたし専用の扇風機の前にいるの
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