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編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子 |
編集:岩田忠利 NO.213 2014.9.12 掲載 |
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枕して寝んね
インコのピーコちゃん
――日吉5丁目の美容院ーー
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沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”
掲載記事:昭和55年7月7日発行本誌No.1 号名「夏
文・写真:岩田忠利
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私が創刊号に載るなんて…
「ピカッ」「バッ」、もの凄い光と音――。この世の最後かとびっくり仰天、私はベッドから飛び降りた。と、私の周囲を6人の人間が取り巻いている。あとでわかったことだか、私の寝顔をカメラに収めているところだった。
人間って、なんと失礼なことをするんだろう。セキセイインコの私にだってプライバシーがある。
でも、私が創刊号に載るなんて聞くと、ちょっと恥ずかしいけど、まんざら悪い気もしないね。それにしても、私の寝相がどんな風に写るか、それがとても気がかりなんだ。
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セキセイインコのピーコちゃん
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育て親、お姉ちゃん手づくりのベッド・布団・枕
私の名前はピーコちゃん。現住所は横浜市港北区日吉5丁目美容院ヴィナス内。家族は父がブル、母がサリー、叔父がジル、姉と兄がチャピーとジョニー。日本で生まれたのに、みな横文字の名前ばっかり。私はまだ小指くらいのとき、人間の手、美容院のお姉ちゃんに育てられた。
この人は、それはもう私を可愛がってくれる。文字どおり私のかゆいところがあれば、すぐかいてくれる。食事のときにはスプーンで食べさせてくれる。お蔭で私は、生まれてから病気もせず、生活の苦労もなく、満2カ月。
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私の育ての親、お姉ちゃんの指の上で
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カラー写真でないのが残念だけど、私の容姿は濃淡のライトブルー、その軟かい毛。みんなから、人間でいえば「美人だ」なんて言われているの。
最近、育ての親、お姉ちゃんが私のためにわざわざ立派なべッドとお布団、そして枕までつくってくれたの。私がいつも美容院の隅っこでこんな格好で寝ているもんだから、お客さんはびっくりして「アラッ、小鳥が死んでる」なんて大声を張り上げる。私はそのたびに飛び起きてしまうんです。そんなことのないよう、ベッドをつくってくれたの。
いま私の一番の楽しみは、お姉ちゃんと一緒に街へ映画を観に行くこと。小さな箱に入れてもらって、もちろん私の食事も用意してもらって・・・。
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私はいつも鏡を見ながらこんな格好で寝るの
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私の枕に布団、専用のベッドだよ
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もう一人の恩人、美容院の先生。動物なら何でも手なずける不思議な人
私には、もう一人の命の恩人がいる。それは美容院の先生。私は先生からいろんなアドバイスをしていただくのだ。
「お前のご先祖たちはいろんな事故で死んだ。ピーコは気をつけるんだよ」「美容のお仕事中、お姉ちゃんの肩に乗ったり、白衣の中にもぐり込んだりしちゃ、ダメ。お前の叔父叔母はみな、そんな遊びをしていてころげ落ち、人間の足に踏まれて即死しちゃったんだから……。そんなとき、お姉ちゃんは遺体を白衣のポケットに入れて、一日中泣いているのですよ」
そんな悲しい出来事がいままでに何回もあったんだそうだ。
先生には不思議な力があるみたい。動物なら何でも手なずけちゃう。一緒にいるカメ(亀)のジンちゃんは、先生が「ジンちゃーん」と呼べばノコノコと先生の所までやって来る。
また、先生が朝寝坊していれば、外のスズメたちがきまって「餌ちょうだい!」って、雨戸をチヨンチョン叩くんだそうな。
そんな心のやさしい2人の間に愛され、育てられている私は、ホントに幸せだ。
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