編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢
          編集:岩田忠利            NO.208 2014.9.10  掲載 

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 巨人軍・多摩川グラウンド

                一日スポーツ記者のルポ   


   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:昭和58年5月1日発行本誌No.16 号名「柏」
   
取材・文・田岡秀樹(会社員 日吉)  写真:小椋 隆(写真家 自由が丘)


  やって来ました、われらコロンブス。

 今回は、熱気ムンムンの多摩川・巨人軍グラウンドから。王助監督、柴田コーチらのインタビューを交えながらのレポートをお送りします。




      おでん屋さんはミュージアム


 AM840 巨人軍多摩川グランドと玉堤通りを挟んだ向かい側におでん屋「グランド」さんがあります。「おばさーん、牛乳ないの」という声。見ると、あの定岡投手と河埜内野手が練習前の冗談合戦中(どうりで、女の子がいっぱいいると思った)。またこのお店の壁には、懐かしい巨人軍の選手の写真や色紙がいっぱい飾ってあります。

 このおでん屋さんと巨人軍とのつき合いは古く、今年で27年になるそうです。おでん屋を始める前は炭屋〃をやっていたのだけど昭和30年頃、この田園調布が日本で一番早く電化ガス化が進み炭屋″では成り立たないと判断し、おでん屋に転業したとか。ここはちょっとした巨人軍博物館ですよ。



おでん屋さんには、懐かしい巨人軍の選手の写真が壁面いっぱいに



1年生だった長嶋さん


入団当時の王さんとオデン屋のおばさん






      王さんも沿線族だった


 AM8:50 「とうよこ沿線=H うちの沿線″ってとこかな。都立大学・自由が丘・田園調布あたりがいいんじゃない。やっぱり住んでりゃ住めば都じゃないけど愛着も持つし、よく行く店も出来てくるよな」
 と話しながらクラブハウスからグラウンドに向かう王助監督。

 お話の途中でも次々にあいさつをしてくるファンの人たち、報道関係者の一人一人に笑顔で応える王助監督。さすがに、ビッグな王さんの人柄の良さを感じました。また「東横沿線」をうちの沿線≠チて表現したところから、本当に深い親しみをこの沿線に持っていらしゃることが感じ取られ、王さんへの親近感がいっそう深まりました。

 王助監督といっしょにグラウンドヘ。バックネット裏で待っている我々の前に続々と登場するスタープレイヤーたち、テレビや新聞・雑誌でおなじみの顔がずらりと。江川、西本、原、中畑、篠塚(う〜ん、すごい!)ほとんど全員集合し終ったかと思ったところに、今年の助っ人軍団、スミスとクルーズがやって来た。

 さて、いよいよ練習開始! ブルーとクリーム色のユニフォームを着た選手たちがいっせいにランニングを始める。



忙しい王助監督にインタビューする筆者



    柴田コーチの「これが青春だ!」


 
AM1020 内野・外野に分かれてのノックが始まるまでの時間に柴田 勲コーチにインタビュー(実況中継でどうぞ)。

――雑誌『とうよこ沿線』ですけれど、お話聞かせてください。
 柴田「とうよこ沿線?」(不思議そうな顔をするが、この雑誌の主旨を説明すると理解したらしく、にこやかな表情になる)

 ――柴田コーチにとって東横沿線ってどんな所ですか?(柴田コーチは浜っ子育ちで、高校は武蔵小杉の法政二高。あの甲子園で夏と春の2連覇達成の優勝投手としてその名が全国に知られ、その後巨人に入団しトレードマークの「赤い手袋」で4度の盗塁王に輝いた名選手でした)

 柴田「ぼくは高校のときから東横線で通っていたから、まぁ、そうだな、大げさに言えば“青春の1ページ”みたいなものだな〜。」

 ――この沿線ではどこが好きですか?
 柴田「今は、ほら、自由が丘へ行く機会が多いから自由が丘かな。でも雰囲気としては田園調布だね」

――柴田コーチが住んでおられる都立大学について一言ご感想を?
  柴田「まあ、あの辺が一番便利で気に入ってるね。それに環七とか目黒通りから少し入れば静かだしね。あとは、高校時代から馴染んでる東横沿線にと思って選んだんですけどね」。

 ――この沿線でよく行くお店は?
  柴田「ぼくがよく行くのは田園調布の焼鳥屋「鳥瑛」さん、あとは奥沢のフランス料理屋「イルピアット」と、自由が丘はいろな所へ行きますよ。子どもといっしょに、ね。

 と、最初は何だこの雑誌″という様子でしたが、やはり、この沿線で青春の1ページを描いた、そしてこの沿線から離れることなく現在も住んでおられる柴田コーチ、その瞳には青春時代の思い出が、この沿線の風景と共に映っているようです。

  さて、この辺でまたグラウンドの方に目を向けてみましょう。



「とうよこ沿線」14号を手に取材に応じる柴田コーチ



 練習は最高潮…タコ焼き・焼きソバ、焼けたよ!


 
AM1100 内野手のチームプレーの練習が始まる。ピッチャーゴロの処理の練習です。江川がマウンドを駆け降りボールを捕りサードの原に投げる(3塁側に集まった女の子たちからいっせいにキャー″という悲鳴)原からショート河埜へ、そして中畑へと、選手がダイヤモンドを駆け巡る。

 AM1130 ナイスバッティング″、いよいよバッティング練習に入ると観客の人数も一段と増えたみたい。おなかのすいた人たちはバックネット裏の屋台で「たこやき」や「やきそば」をほうばっています。バッティングゲージの中で打っている山本功司選手のものすごい打球が、今ちょうど多摩川鉄橋の上を走っている東横線の電車めがけて大きなアーチを描いて飛んでいきます。

 一方、投手陣はピッチング練習場へ。江川と西本が並んで投げる。いつもテレビで見るあのフォームそのまま(当然のこと)だけど、近くで見るとすごい迫力。ときどき江川がとばすジョークに観客からもどっと大きな笑い声が湧きあがります。

 選手たちの動きも最高潮に達し、3塁ベンチの中にぎっしりと陣どった新聞記者たちのカメラがプレーの瞬間をすかさずキャッチします。



練習終了後の片付けは、新人の役目です




       ファンの期待に応えます!


 
PM l30 そろそろ練習も終わりに近づく。しかしここ″はまだお祭り騒ぎ! 
 カメラを持って人気選手ばかり追っかける女の子、スポーツ紙の解説を片手に一人一人じっくりと確認する自称野球評論家≠フおじさん……いろんな場面、いろんな情景があります。

 それがファンの期待に応えようとする選手たちの気持ちに拍車をかけます。ちょうど、この『とうよこ沿線』と同じように。



グラウンドの周りに群がるファンの歓声「ワァー・キャー」が飛び交う

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