編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
編集:岩田忠利    NO.194 2014.9.03 掲載  

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  こんな散歩道があった!

                                                 

   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:昭和55年7月7日発行本誌No1 号名「夏」

   
取材・文 :原田達蔵 (学生 田園調布) 



 多摩川園が廃館になって以来、ちょっぴり寂しくなった多摩川園前の駅を降り、改札を出てまっすぐに多摩川の方へ行く。

 堤防沿いの道路を右へ50bほど、右手が都立多摩川台公園の入口。表札の手前に、長さわずか1.5bほどの愛らしい亀甲橋がかかっている。左手にうっそうと茂る樹木の枝ごしに多摩川を見おろしながら、石段を一つ一つ上がってゆく。小さな広場があり、コンクリート造りめ休憩所がある。

 ここまでくると自動車の騒音もだいぶ遠くなり、あたりは野鳥のさえずりでいっぱい。さらに上がってゆくとかなり広い整地にたどりつく。左手にかわらぶきの屋根の古風な休憩所、隣り合わせに紫色のふじの花をからませたテラスがならぶ展望台。

 ここからの眺望は実にすばらしい。天気の良い日には、樹木の枝ごしに、相模連山や富士山が見える。また眼下には大きく蛇行した多摩川の流れが雄大に広がる。そして右手には、長さ東西100bという都内最大の前方後円墳、亀甲山古墳が樹木の中に静かに身をよこたえている。

 トレーニング・ウェアに身をつつんでジョギングしている婦人、犬を連れて散歩中の老人、みんなの顔がとてもやさしい。小鳥のさえずりに、確かな大地の手ごたえに、森の緑に安心したのだろうか……。

 さらに歩く。広い集会場があり、すみには児童遊園施設もある。ここから先は自然遊歩道がいく本にも分かれており、どの道を行くかは本人の自由。ただし、いずれの道も木の根がはっていたり、粘土質で滑りやすいなどのかなりの悪路(私はこういう所が魅力の一つだと思うのだが……)なのでくれぐれも注意。そして、田園調布駅と多摩川園前駅のほぼまん中あたりに赤く鮮かに彩られた虹橋がかかっている。

 虹橋をわたり、自然遊歩道を気のむくままにつき進み、心の中がきれいに洗い流された頃に多摩川台公園の出口前の広場にたどりつく。

 公園を出て、田園調布のお屋敷が建ち並ぶ、その中を左へ少し行き、コンクリートの坂道を右へ降りきる。そこに今度は宝来公園という、またも緑豊かな公園が傾斜面を巧みに利用して造られている。公園内の池を悠然と泳ぐアヒルたち、田園調布のゆとりを感じる。



宝来公園のアヒルたち

 傾斜面を登りきり宝来公園を出る。田園調布の駅までまっすぐに銀杏並木が続く。この銀杏並木は、都会生活の中で忘れられがちな、自然の四季の変化を鮮かに演出してくれる。
 私の友人の中には、この銀杏並木を背景に、四季別に写真撮影し、アルバムに納めている粋な奴もいる。


  以上が東横線多摩川園前〜多摩川台公園〜宝来公園〜銀杏並木〜田園調布駅を結ぶ私の散歩道。
 あなたも通勤前、通学前のわずかな時間を緑の世界へ途中下車してみたら……? いい顔で一日のスタートができますよ。

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