編集支援:阿部匡宏
編集:岩田忠利      NO.133 2014.7.28 掲載  

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歴史
   白楽
                                                 

   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』の好評連載“復刻版”


   
掲載記事:昭和59年1月1日発行NO.20 号名「松」
    執筆:前川正男
(都立大・郷土史家)  絵:斎藤善貴(尾山台) 


  下町と山の手と…


 「白楽」はよい街だ。周囲に学校が多いせいか、ヤングが多く、昔の神田を偲ばせる。いや伊勢佐木町裏の雰囲気がある。沿線の中でも独特のムードを持つ街だ。



    にくいほど下町的・・・六角橋商店街

白楽駅の西口を出ると一方通行の通りがある。「六角橋商店街」である。ヤング向けのファーストフードもあれば、昔懐かしい縄のれん風酒場も多い。広くもない通りだが、一方通行なので、身の危険を感ずるほどのスリルは無い

片側には、大きな花のプランターが並び、とても美しい。店の前の駐車防止のために置かれたものらしいが、「駐車厳禁」などと殺風景な立札を立てないところが、とても下町的で、ほほえましい。駅前の床屋さんも1200円で、学生さん向き。
 それから、下町には必ずあった芝居小屋。これが映画館になっていたが、その名前が「べにぎ(紅座)」とひらがなのところも、またにくい。




旧綱島街道の面影を残す白楽商店街

      時代が遡る…仲見世通り

この六角橋商店街のすぐ裏に、商店街に平行して、アーケードを持ったうなぎの寝床のような細長い商店街がある。その商店街に、いみじくも付けた名前が「伸見世通り」。二人の人がすれちがうのもむずかしいほど、両側の店の商品がせり出しているのも、活気ととられるようなムードだ。

中に、昔懐かしい駄菓子屋さんがあった。子供が大勢店にいて、ガムを噛みながらクジを引いていた。何だかタイムカプセルの中にいるような気がして、思わず店に入ってしまった。

 昔は、こういう駄菓子屋には、中年過ぎのおばさんが店番をしていたものだが、このお店は、若い娘さんが立ったまま漫画本を読んでいた。袋菓子を2個ほど買うと、その応対は想像以上の親切さだった。あるいは、いまおばさんの代わりにちょっと店番をしているのかも知れない。
 すっかりよい気分になって、近くの飲み屋でちょっと一杯やりたくなったが、まだ陽が高いのでやめた。ともかく、うれしいムードで溢れている。



    がらり変わって高級住宅


 
これまでは、白楽駅から神奈川区地籍の六角橋の方へ足を向けていたが、こんどは西口駅前から港北区になる篠原台町の方へ行くと、ムードががらりと変わる。このあたりの高台一帯は、県知事公舎をはじめ、高級住宅、公園、社寺などが多く、山の手ムードに一変する。

江戸時代には、本郷三丁目から山の手あたりに相当すると文献にあるが、現在の白楽は、下町と山の手が背中合わせに共有している珍しい街である。

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