編集支援:阿部匡宏
編集:岩田忠利      NO.113 2014.7.16 掲載  

画像はクリックし拡大してご覧ください。

歴史 地名H
    数づくし


   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』の好評連載“復刻版”

   
掲載記事:「地名 その23 昭和61年2月20日発行本誌No.32 号名「樫」
   執筆:桑原芳哉
(大倉山・学生) 絵:石橋富士子(横浜・イラストレーター) 地図:伊奈利夫(桜木町


  の連載を書いていて、以前から気になっていたのが、数字≠フつく地名。
 有名な「六本木」に対する「五本木」とか、神奈川区にやたら数字のつく地名が多かったり。でも、ただ数字のつく地名ばかりを並べてもおもしろくないな、と思い、取り上げずに来ました。

 今回とりあげたのは、別に新しい発見があったわけでもありません。ただちょっと、ネタが苦しくなってきて…。今回ばかりは、どうぞお許しを。


 
まずは、沿線の町名、駅名から数字のつくものを順にあげてみよう。

 これがない。しいてあげれば、「市ノ坪」(川崎市中原区)か。これは本来は「一の坪」のことだという。

 …二子(川崎市高津区)、二本榎、二ッ谷町(横浜市神奈川区)

 …三田(東京都目黒区)、三宿、三軒茶屋(東京都世田谷区)、井田三舞町(川崎市中原区)、三ッ池公園(横浜市鶴見区)、三ッ沢、三枚町(横浜市神奈川区)

 ‥・縁起が悪いためか、ない。

 五五反田(東京都品川区) 五本木(東京都目黒区)

 …六角橋(横浜市神奈川区)

 …七島町(横浜市神奈川区)

 八…八雲(東京都目黒区)、上丸子八幡町(川崎市中原区)

 …九品仏(東京都世田谷区)

 あとはかなりとんで、

 …北千束、南千束、千鳥(東京都大田区)、千年(川崎市高津区)、千若町(横浜市神奈川区)

 この中には、すでに他の編でとりあげた地名もあり、まだ取り上げていないものについていくつか見てみよう。

  江戸時代の「組」の名残

  五本木  (東京都目黒区)

 目黒区の「五本木」は、何かにつけてあの「六本木」と比較され、迷惑なことだろう。

 五本木と言う地名は、一時期地図の上からは姿を消していたことはあるものの、江戸時代からの歴史を残しているものである。

 江戸時代には、「村」の下に「組」という行政単位が置かれていた。現在の五本木付近は、江戸時代には上目黒村にあった四つの組のうちの一つが「五本木」という名だったのである。

 六本木などは意識せず、マイペースで江戸時代からの名を守ってほしいものである。








































昭和13年6月、五本木通りをゆく鼓笛
五本木小学校の鼓笛隊
提供:天野きつ(五本木2丁目)

  縁起の良い地名がずらり

  千年 (ちとせ) (川崎市高津区)

 
「千年」は、かつては「千歳」と書いた時期もあった。「千歳」という地名は全国にも多いが、その多くは町村合併時などに縁起の良い地名を、ということでつけられている。「千年」も同様で、明治8年に清沢村と岩川村が合併した際、新しい村の名として「千歳」の名をつけ、明治22年に「千年」と変わったものである。

 それにしても、この付近には縁起の良い地名が多い。久末、末長、久本と並んでいる。明治8年に新しい村の名を決める時にも、周りの地名をかなり意識したのであろう。

 この千年から、南の子母口あたりにかけては、橘小学校、中学校、橘樹神社があり、かつての橘樹郡の名を残すものの多い地域である。


  離れた所に似た名前

  井田三舞町(いださんまいちょう) (川崎市中原区)

  ◆三枚町  (さんまいちょう) (横浜市神奈川区)

  川崎市中原区に「井田三舞町」、横浜市神奈川区に「三枚町」と、字こそ違うが読みのまったく同じ町名がある。

 井田三舞町は、昭和15年に井田から分かれてできた町名である。かつての井田村には、小字として「三枚」があった。これが、現在の「井田三舞町」につながるのであろう。井田村の小字「三枚」の由来としては、昔ここに芝地が三枚(3区画)あったため、といぅ説が伝えられている。

 一方、神奈川区の三枚町は、昭和2年に現在の町名となっている。それ以前は「三枚橋村」であった。この村名の由来については、明らかにされていない。

 「サンマイ」という地名の語源としては、一般には叡山の三昧院に発して死者追善のために造られた三味堂があったか、墓場があった地、というものが考えられている。しかし、三枚橋村の場合は、「橋」の名であることから、三枚の板がかけられた質素な橋によるものとも考えられている。


 「井田三舞町」と「三枚町」では、その起こりをやや異にするようである。


  ラッキーセブンはただ一つ

  七島町 (ななしまちょう)  (横浜市神奈川区)

 
数字のつく地名も、二、三のあたりはかなり多いが六、七となると少なくなる。八は末広がりで縁起がいいためかまた多く、九は苦″に通じて縁起が悪いのか、また少ない。

 数少ない「七」のつく地名が「七島町」。町名としては昭和11年に生まれている。「島」と言っても、これは平地から見て島のように見える高台の地のことである。しかし、「七」の由来は不明である。丘が七つ、または数に関係なく多く連なっていたのか、あるいは「ナガシマ」「ナワシマ」などから変化したのかもしれない。

 それにしても神奈川区には数字のつく地名が多い。町名以外にも八反橋(バス停)がある。数字のつく地名同士には何のつながりもないので、偶然集まってしまったのだろうが、興味深い地名である。

    <主な参考文献、資料>

 『角川日本地名大辞典 13東京都、14神奈川県』
 『横浜の町名』 『新編武蔵風土記稿』
 『目黒区の歴史』
「とうよこ沿線」TOPに戻る 次ページへ
「目次」に戻る