「祇園町」と関係あり?
◆木月天王森 (きづきてんのうもり) (川崎市中原区)
「天王森」とは大そうな名だが、実体はさほど大きなものではない。むしろ小さな交差点である。県道鶴見溝ノ口線、木月陸橋の東、東急の元住吉検車区のそばにあるこの交差点、当編集室からもほど近い。
さて、「天王森」という地名だが、別に陛下にご関係あそばされるわけではない。木月の地にかつてあった「天王社」に由来するものである。「天王杜」に由来する地名としては、「木月祇園町」をNO.103でとりあげた。
この二つの地名の元となった「天王社」が同じものであるかどうかは定かでない。やや離れてはいるが同じ「木月」の地、関係があるのかもしれない。
ともあれ、ここを通る時はくれぐれも事故のないように。「天王」様の目の前で、信号無視など、いけませんよ。
悲恋の伝説はないのかな・・・
◆越路 (こしじ) (川崎市幸区)
木月天王森を通る県道鶴見溝ノ口線と、県道大田神奈川線とがY字形に分かれる地が「越路」。現在は幸区南加瀬に位置し、「越路」と書かれるが、かつては「「戀地」とも書かれたようである。
『新編武蔵風土記稿』南加瀬村の項に小名として見られるのが「戀地」。
「戀」は新字体に直せば「恋」。「恋地」とは、思わせぶりな地名である。
北陸は石川県の能登半島には、「恋路海岸」があり、ロマンチックな名に魅かれて訪れる人も多いという。そしてここには、乙女の悲恋物語が伝えられている。川崎の「戀地」改め「越路」には、似たような話は伝えられていないのだろうか。
地名の起こりを考えると、「越路」も「恋路」も「戀地」も、乙女の悲恋物語とは関係ないようである。「越路」ならば文字通り「越える路」、つまり山越えや川越えの地をさし、さらには「国境」をさす場合もあるという。石川県の「恋路」は、海岸に突き出た山を越える地、と考えられている。
もう一つ、湿地を意味する「小泥(こひじ)」から変化した場合もある。山や大きな川もない川崎の「越路」の場合は、こちらの意味かもしれない。
「戀」という字は「いと(糸)しいと(糸)しと言う心」と書くのだそうだ。住宅と工場ばかりの川崎の地図には、「戀」も「恋」も見つけられない。
☆★
交差点の名に、このような今は消えてしまった地名がつけられている例は多いが、「区役所前」など、「〇〇前」という名の交差点も数多い。
そのきわめつけが、世田谷区にある。玉川警察署を囲むようにある3つの交差点が、「玉川署前」「玉川署脇」「玉川署裏」。ここまでやれば、少しほ違反も減るかもしれないが……。
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