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編集:岩田忠利     NO100 2014.7.10 掲載  

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歴史 地名⑨ 生きている沿線の歴史  
「台」のつく地名だい!
 
 沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』好評連載“復刻版”

   
掲載記事:「地名 その13 昭和599年5月1日発行本誌No.22 号名「槇」
   執筆:桑原芳哉
(大倉山・学生) 絵:石橋富士子(横浜・イラストレーター) 地図:伊奈利夫(桜木町


 前回の地名では「丘」のつく地名を紹介しましたが、今回は「丘」と並び、よく見られる「台」のつく地名をとりあげました。
 「丘」のつく地名は、沿線でも意外と古くからあることが分かりましたが、「台」のつく地名にもおもしろいもの、よくわからないものなど、いろいろあります。
 渋谷から横浜まで、「台」づくしで、行ってみよう。



  まずは渋谷でも有名な・・・

  南平台町(なんぺいだいまち)  (東京都渋谷区)

 高級住宅街としてその名も知られる南平台。この地名は、昭和7年から町名として用いられている。その起こりについては不詳であるが、『新編武蔵風土記稿』豊島郡中豊沢村の項に「平代(ひらだい)」の小名が見える。

 この小名(小字)の「代」の字が「台」に変わり、「南の平台」という意味から「南平台」という地名が生まれたとも推察できる。また「平代」の「代」はもともと「台地」の意味だったとも考えられる。

 それにしても「なんペいだい」とは、音だけ聞くとかわいらしい。「ペ」という発音がおもしろいためであるかもしれない……。


  お次はなんと源平の昔で・・・

  旗の台         (東京都品川区)

 大井町線と池上線の乗換駅、旗の台。この地名は、源氏の白旗にまつわる伝承が残っていることに由来するものである。

 長元4年(1031)、平忠常の乱平定のおり、源頼信がこの地に八幡大神をまつり、源氏の白旗をひるがえしたという伝えがあり、付近には旗ヶ岡八幡社が存在する。また「源氏前小学校」などという名称も見られ、「台」のつく地名としては珍しく歴史を感じさせる地名である。

 
  どちらがどちら?

小山台(こやまだい)  (東京都品川区)

尾山台(おやまだい)  (東京都世田谷区)

 かたや「こやまだい」、こなた「おやまだい」である。尾山台は大井町線の駅にもあり、小山台は目蒲線武蔵小山駅近くである。

 品川区の小山台は、隣に「小山」という町が存在するように、「小山の高台」という意味である。もっとも、「小山」という地名も「小さな高台」の意で、台地と同じことではないかと考えられるが……。

 世田谷区の尾山台の歴史をさかのぼると、江戸期から明治8年までは「小山村」であり、さらに戦国期にも「小山郷」であった記録がある。しかし、「古は尾山ともかけり」(『新編武蔵風土記稿』)という記載もあり、「小山」と「尾山」、どちらが先かは不明である。いずれにしても、「尾山の高台」の意であることは確かであろう。



 昭和11年都立小山台高校の府立八中時代

 
旧制東京府立第八中学時代から政財界など各界で活躍する多くの著名人を輩出しています。
 校庭右角の前が武蔵小山駅前
  提供:山崎 修さん(品川区小山3丁目)


 横浜市にある「台」のつく地名あれこれ

 横浜市は丘陵地が多く、「台」のつく地名も多い。
 港北区には、「綱島台」「大曽根台」「篠原台町」がる。いずれも付近の地名に「台」をつけたもので、周辺よりも少し高くなっているところにつけられた地名である。

 また、神奈川区から西区にかけて、海から少しはいったあたりに「子安台」「神之木台」「広台太田町」「高島台」「台町」「浅間台」が並ぶ。

 台地が海岸沿いに続いていることを、地名がよく表わしているといえよう。『新編武蔵風土記稿』上台町の項には「此所は入海の上にて景色いと美なり、ここを神奈川の台と称して旅人も必ず足を止めていこふ所なり」との記述がある。
 かつては「いと美なり」の景色も、今見えるのは工場や倉庫ばかり。それでも海がちらりと見えるのが、わずかばかりのなぐさめになろう・・・。

                            ◆◇◆

 このほか、「台」のつく地名としては、「青葉台」(東京都目黒区)「上池台」・「石川台」(東京都大田区)「子母口富士見台」(川崎市高津区)がある。さらに、各地で通称として使われているものも多い。

 これら「台」のつく地は、そのほとんどがマンションの立ち並ぶ住宅地となっている。人はやはり、高い所が好きである……。


  <主な参考文献、資料>

 『角川日本地名大辞典 13東京都』

 『横浜の町名』 『東急線各駅停車』

 『新編武蔵風土記稿』 

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