
編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏 |
NO.916 2016.08.07 掲載 |
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“ハーフ球児”と二刀流 |
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文:岩田忠利 |
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近年目立つ、活躍する混血の選手
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1980年ころからのグローバル化で人的交流も盛んになり国際結婚による混血児童が増えてきました。その子供たちが成長し、今はハーフ二世が各界で活躍する時代になっています。
最初に私がハーフ球児に気付いたのは十年ほど前、「ダルビッシュ有」(東北高校・投手)でした。4度も甲子園に出場、十年ぶりにノーヒット・ノーランを達成、27イニング無失点記録を残したその怪腕ぶりには驚いたものです。
また昨年は、東東京代表・関東一高、オコエ瑠偉(るい)の俊足、好守、強打が甲子園の話題に。
ハーフ球児が増える理由は…
今年は例年になく活躍するハーフ球児が増えています。その主な理由は?
まず第一は、身体的能力である筋力・瞬発力・心肺持続力・俊敏性・柔軟性などに優れていること。
第二は、そうした能力をもつハーフの中学生を私立高校が探し、スカウトすること。その背景には少子化時代があり、そのサバイバル策として生徒募集のための甲子園出場での知名度アップという狙いがあります。
では、今年はどんなハーフ球児が……から。
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アドゥワ誠投手(愛媛県代表 松山聖陵高3年)
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抜群の運動能力 万波中正外野手(横浜高1年) |
ナイジェリア人の父と日本人の母の間に熊本県熊本市に生まれ育った次男。兄も九州国際大附属高(福岡)で甲子園出場。
中学時代から熊本市のシニアで活躍。愛媛県の松山聖陵高に進学したが、腰痛で実績をあげられなかったが、3年生の冬に10キロの増量に成功、球速が145キロとなり春の県大会で準優勝を果たす。
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プロも注目のアドゥワ誠投手
196センチの長身から最速145キロの速球を投げおろし、夏の県大会決勝戦は117球2失点の完投、優勝投手に。
松山聖陵高の野球部創部47年目に初の甲子園へ導いた。 |
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万波(まんなみ)君はコンゴ共和国人の父と日本人の母のもと、都練馬区生まれ。
188センチ、90キロと恵まれた強打者。昨年までの中学時代は野球部と陸上部の二刀流。中学1年時は100mハードル都大会4位。3年のときは砲丸投げで都大会優勝。運動能力抜群である。 |

去年まで都陸上競技大会で砲丸投げ優勝など活躍していた万波くん |
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激戦区、神奈川県大会を勝ち抜いた横浜高校は、甲子園優勝候補筆頭にふさわしく精鋭ぞろいのナイン。その中で1年生の万波君が「8番・右翼」で2試合連続のスタメン出場。その試合でフルスイングした打球がグングン伸びてスコアボード下の広告塔直撃。そのシーンをテレビが大写し。アナウンサーが「推定135メートルはあるでしょう」と興奮気味に実況中継した。
可能性を限りなく秘めた素材である。
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メンディス海投手(市立川越高 2年)
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オコエ瑠偉外野手(関東一高 現プロ野球東北楽天)
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メンディス海投手は、スリランカ人の父と日本人の母との間に生まれた。身長176センチ・体重65キロ、ハーフ球児としては小柄な選手だが、やることは大きい。
埼玉県の優勝候補と目されていた野球の名門校、浦和学院を1−0で破る番狂わせを演じた立役者であった。
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優勝候補の筆頭、浦和学院を破り、埼玉県の“公立校の星”といわれる2年生左腕、メンディス海投手
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浦和学院は昨秋と今秋の埼玉県の王者。その第Tシード校をノーシードの市立川越高、2年生の左腕・メンディス君は8回を投げ切って5安打無失点の好投。しかも勝利の1点は、自ら三塁打を放ってホームを踏んだ得点だった。
投手としての彼の魅力は、ホームベースの四角のコーナーを投げ分けるコントロールの良さ。強打の浦和学院打線の低めをついて凡打を繰り返えさせた。その後、“公立校の星”として準々決勝まで投げて躍進した原動力っとなったことは快挙、素晴らしいである。来年の成長が楽しみな投手である。
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オコエ瑠偉(るい)外野手の両親は、ナイジェリア人の父と日本人の母。東京・東村山市に生まれ、7カ月で歩きだす赤ん坊で、6歳から野球を始める。
6年生のときには3番・捕手として東京都大会優勝、関東大会3位になっている。 |

100周年を迎えた昨年夏の甲子園その大会の“目玉”として注目された東東京代表、関東一高のオコエ選手 |
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オコエは、185センチ・90キロの恵まれた身体に高い運動能力を併せ持つ、走攻守3拍子そろった大型外野手。それを裏付ける彼の身体能力について述べてみよう。
類稀な身体能力の高さ
守備は遠投120メートルの強肩。視力が2.4という“鷹の眼”のような持ち主d眼で守備位置のセンターから捕手が出す指のサインを見て守備位置をを変えたり打球予測するのだそうだ。走塁は50b5秒96の俊足、日本球界トップクラスのタイムを誇る。普通は単打の打球を二塁打にしたり、外野手の間を抜かない打球でも三塁打にしてしまうカモシカ並みの走力があるのだ。
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いま日本のプロ野球では日本ハムファイターズ・大谷翔平選手の二刀流が話題になっている。彼は日本人最速の163キロを投げる豪速球投手、2016.8月6日現在投手としては8勝4敗、防御率2.57 打者としてもチーム内の最高打率3割4分7厘、ホームランも16本。先月7月、日本ハムファイターズが球団新記録の15連勝を達成したのも大谷の投打の活躍がその牽引役を果たしたといわれている。
明日、8月6日開幕の夏の甲子園、第98回全国孤島学校野球選手権大会に大谷に次ぐ二刀流選手が登場するのか……また地方大会で敗れ去った選手のなかに将来二刀流として活躍する選手はいるのか……探ってみたい。
まず、その前に上記の大谷翔平の横顔を以下、紹介する。
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大谷翔平投手兼外野手(花巻東高OB 日本ハム)
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藤嶋健人投手(愛知・東邦高 3年)
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社会人野球の選手だった父とバドミントンの選手だった母との間に岩手県奥州市に生まれた22歳。
身長193a・体重92`の日本人離れした体格。その長身から投げおろす速球は、日本人最速の163`。 |
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「2桁勝利2桁本塁打」は世界の野球の神様、ベイブルース以来と騒がれている。今年7月のオールスター戦第2戦で本塁打を含む3安打2打点で最優秀選手に選ばれた。
花巻東高時代は1年生の秋からエース、2年春には最速151`を記録し「みちのくのダルビッシュ」と呼ばれ注目される。甲子園には2度出場しているが、「骨端線損傷」で投げられず4番・外野手で優勝投手、現阪神のエース・藤浪晋太郎からホームランを打つ。夏の岩手大会ではアマチュア野球史上初の最速160Kを記録した。
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最速146`の右腕。1年生の夏、エースとして甲子園に出場。今春は「エース・4番・キャプテン」とセンバツの甲子園に、そして今夏の甲子園と、3度目の甲子園のマウンドに立つ。
写真右のようにダイナミックなフォームで三振を奪うたび帽子を飛ばして雄叫び……この仕草を称して「吠えるピッチャー」は、今や甲子園名物の一つ、 |
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帽子を飛ばして大声で雄叫び、「吠えるピッチャー」といえば、この東邦高・藤島投手のこと。
野球漫画を地でゆくような存在だ
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高2の秋の東海地区大会では、この気迫でノーヒットノーラン、打っては連続打席で2ホンノホームランを放ち、優勝している。高校通算38本の本塁打、打率3割9分7厘の強打、その二刀流は世間が注目。その藤嶋投手は、二刀流の元祖・大谷翔平のフアンである。
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細川成也投手・外野手 (茨城・明秀学園日立 3年)
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藤平尚真投手・外野手(横浜高 3年) |
投手で4番、打っては高校通算63本のホームラン。岐阜の王者、中京高との練習試合では推定150bを飛ばした恐るべき打力は高校生レベルではない。
中学3年のときジュニアオリンピックのヤリ投げで77.42bの大会新記録(全国歴代2位)を出した。もともと“地肩”が強く、投手として成長。今は最速146`の本格派で、切れのいいスライーダーも130キロを超える。
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無名校を茨城大会決勝戦まで躍進させた細川の投打二刀流の活躍。
その裏には青森・光星学園を15年間に8度も甲子園に出場させた名将の指導があった
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彼の転機は高校入学だった。「金沢監督の指導を受けたい」と金沢成奉監督のいる明秀学園日立を選んだ。巨人の主軸・坂本勇人らを高校(青森・八戸学院光星高)時代に指導した同監督のもと、一気に開花。2年生の冬、同監督に打撃を徹底指導されると、本塁打を量産。「長打力は、坂本勇人(巨人)や北条史也(阪神)や田村龍弘(ロッテ)ら教え子の中でも別格だ」と金沢監督は高く評価している。
プロ入り後、“大谷翔平二世”の二刀流が見られる日もそう遠くない。 |
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全国一の激戦区、神奈川県の優勝投手、藤平尚真(ふじひらしょうま)投手は、今季夏の甲子園屈指の右腕といわれている。185a・83`の恵まれた体格。
その長身から投げおろす球速153`は、今大会最速と言われている。
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日本人離れした体格から繰り出す豪速球とそのリストで振る打球の藤平にご注目を!
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県大会前の6月、全国の精鋭を集めた慶応大学野球部の二軍との練習試合が行われた。みな1、2年先輩の大学生を相手に藤平は14奪三振、1失点の完投を見せた。コントロールとスピート、威力をもったストレートは、とても高校生とは思えない。
打撃でも県大会で一試合に2本のホームランを打つなど、高校通算本塁打二十数本を誇る。左右への流し打ちの安打技術も併せ持つ。
名将で幾多の有名選手を育てた渡辺元智・横浜高前監督の話では、投手としての力は涌井(現ロッテ)よりも上。投打の二刀流の力は、甲子園で何本か本塁打を打ったりして「怪物・松阪大輔」よりも一段上だそうだ。 |
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