編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.523 2015.03.15 掲載
   追跡! 地域問題
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23
 地域問題を取材し、お伝えします!           
   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”

   掲載記事:平成元年4月1日発行本誌No.46  号名「栂
(つが)

 

  街づくり――綱島を考える


 ここ数年、東横沿線各地の駅前商店街で再開発やショッピンクプロムナード化が、急速に進められ、快適な買物広場や交流の場が出現し、その建設途上にある。例えば、大倉山西口のエルム通り、日吉・元住吉西口・新丸子医大通りのショッピンクモールなどは、その一例だ。

 このような沿線の動きの中で、「綱島の街はどうなるのだろうか」との声をよく聞く。港北ニュータウンなど広範囲の後背地をもっているこの街は、自動車による交通渋滞や駅前の整備など、現在解決すべき問題をいくつもかかえている。

 これからどんな街になってゆくのか、どのような街へ発展してゆくべきなのかを、今回の「ホットライン」では、地域特集「綱島」に合わせて、東口・西口の再開発の責任者とさまざまな分野の住民の方々の意見を取り上げ、ぜひ読者の皆さんにも、綱島の未来をお考えいただきたいと思う。
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 西口の現状

     セットバックを実施――西口

西口駅前通りは、住友・協和の両銀行前に放置された自転車で、車一台通ると人は歩けない

まず、西口について、綱島西口再開発協議会会長の大谷宗弘氏にお聞きした。

 西口の再開発については現在、以前の温泉街であった綱島西2丁目と3丁目の一部において、昭和575月に制定された綱島西地区街づくり憲章と街づくり協定に基づいて行なわれている。

 この憲章の方針は、人間優先の歩行者空間の創造と、地域住民に利便を提供する新しい街づくり・商業空間の推進とである。
 歩行者優先の街づくりということで、歩道部分の新設を一つの柱としている。いわゆる一階部分の壁面線後退(セットバック)の実施である。イトーヨーカ堂などが面している中央モールについては3メートル、それ以外のサブモール部分については2メートルのセットバックを行なうようなかたちになっている。
 しかし、中心の西口駅前付近、綱島西1丁目については、この憲章の対象地域には入っていない。
  大谷会長によれば、コンセンサスが得られない現在の状況は、「残念である」とのことである。
 やはり歩行者優先の街づくりのため、2メートルのセットバックについてぜひ協力してほしいと大谷氏は訴えている。


 しかし、駅前に銀行が建ち、街の骨格を決めてしまっていることなど、なかなか駅前については再開発は難しいようである。大谷氏は、「きっかけがない。危機感は皆もっているのだが…。横浜市がぜひ乗り出してもらい、再開発を推進してほしい」と言われた。打開策ははたしてないものだろうか。


 これが東口

     再開発計画に基づく−東口



東口駅前には東急と臨港バス、二つの発着所があり、絶えずバスが出入りする。そこへ駐車違反者の放列。人はその間隙を縫って歩くのだ

さて、東口はどうであろうか。西口同様、綱島東口再開発協議会会長の池谷光朗氏に伺った。

 そもそも、東口再開発のきっかけは、西口の開発状況であった。
 それは、西口が既存の車道部分には手を入れない開発手法をとったからである。

「狭い道のままでは、現在の交通渋滞の状況をみても、真の東口の発展は望めないのではないか」との考えに基づいて、道路網の整備も含めた開発計画の着手を昭和582月の協議会発足以来行なってきている。

 昭和62年、横浜市より東口再開発のマスタープラン(基本構想)が発表された。しかし、これは事業化へ向けた「たたき台」という性格のものにすぎず、また綱島駅が渋谷側へ東横線複々線化により移動するという事態を迎え、基本的なところから、もう一度考え直す時期にきているという。
 東口の再開発の現状と今後について、池谷会長は、「まだ、再開発に無関心な人がいるのも事実。また、最近再開発が待てずに部分的な開発も進められており、権利者の人達の意志固めを行なって行くことが最も必要だ」と述べられた。

   発展の方向性を!

 綱島の東口・西口の双方の再開発の現状とこれからを考えるうえで、きわめて大きな問題は、総合的なプランがいまだ確立していない段階では、結果的にミニ開発による単発的なものしか期待できないということである。

 だから、街全体としてどのような人たちが綱島にやってくるのかということを、ここでもう一度考える必要があるのではないか。そうでないと、「はじめ土地ありき」で行なう街づくりは、意味のないものどころか、綱島の存在自体を掘り崩しかねないと思うのである。

  では、次に住民の声をきいてみよう。       

             
取材・文:西野裕久


  

 

街づくり――私の意見

  綱島の魅力と欠点は……
   私ならこんな街にする……

     わたしの再開発案と遊覧船

 町内会「綱和会」会長
 松永敬國さん

(元小学校校長・
69歳。綱島西5丁目在住)


    最大の欠点は一校もない中学校

 綱島の土地柄は、人情に厚く、心の落ち着く雰囲気をもっています。毎週日曜日、朝の座談会に3050人の集いができるのも楽しい。
 希望すれば市民菜園も、春には綱島公園の花見、夏は公園のプールで泳ぎ、テニスもできる。そして諏訪神社の夏祭、鶴見川の花火大会。秋の健民祭など、住民の憩いとふれあいの場が実に多い。教育にも熱心な土地で、小学校が3つもある。
 しかし不思議なことに、中学校が一校もない。仕方なく、隣接の町の大規模校に通っているのが現状です。これが綱島の欠点。地域に心の通う中学校がぜひ、欲しい。
 交通の邪魔になってる自転車の放置問題を解消し、駅前の再開発に取り組んでいただきたいと思います。

           わたしの3案

 私は、綱島駅周辺をこんなふうに改善したら楽しい街になるのでは……と考え、提案します。

  1. 綱島駅は幸い、2階にあるので、東西の出口を2階にする。再開発駅前を上は歩行者天国とし、下は車を通し、各商店は2階から出入りし、電線も2階下を通す。そうすれば電柱は不要になるし、整然とした歩きやすい街になることは請け合いだ。

  2. 西口方面の場合、バスは上町(野菜市場付近)に「発着所」を新設すればよい。現在も通勤者は、子母口通りが渋滞するので上町バス停で下車している。

3 横浜市内唯一の一級河川、鶴見川に横浜港〜綱島間の定期遊覧船の運行。一日10往復も実現できれば楽しい。

   駅前の混雑緩和策を考える

 綱島一番会会長
 中森伸明さん 

「中森」社長 4
3歳 綱島西1丁目在住


     正常なバス運行ができる道路に

 綱島駅周辺の最大の問題は、なんといっても道路・交通問題……。朝夕長蛇の列となる県道子母口の慢性的な渋滞は、通常のバス運行もできない有様です。
 将来、この子母口線の歩行者路の確保、さらには綱島街道の拡幅も必要でしょう。バスが時間どおり正確に来ることが、来街のお客様への最も重要な条件です。

 つぎの問題は、無法駐車と駐車場の不備があげられます。これが周辺の交通事情を悪くし、楽しく安心できる街からは程遠い環境にさせています。幸い、今年6月、東横線の高架下に約2700台収容の駐輪場が完成する予定ですので、自転車は大分管理されるはず。駐車場についても西12丁目街区に高層化の駐車場を建設するように地権者のご理解をいただくため、いま話しあいを進めております。また東口側では、旧新水駐車場が約500台収容可能な高層パーキングの建設をめざし、その実現のための計画が着々と進行しているところです。

 道路の拡幅問題は行政当局との関連もあり、なかなか早期実現は難しいことです。しかしここで、私たちはすべて行政依存だけではいけません。私たちの自助努力も必要です。交差点の隅切りや構築物のセットバックなど、個人一人一人の努力で出来る所から始めるべきです。こうして初めて、快適な歩行者空間が生まれ、車両出しがスムーズになるのだと思います。

  さらに綱島の市街地のバイパスとして日吉・元石川線を開通させることも混雑緩和に大いに役立ちますので、その延伸工事の推進に向け、みんなの声を反映させるべきだと痛感いたします。

      商店街と店の自覚

 つぎの課題は、商店街と個々の商店が将来へ向けての街づくりに対する協力姿勢の問題だと思います。

  ハード面で言えば、全体計画に基づく商店街の商業施設・各店舗の内外装・ストリートファニチャーの完備など進めていく必要があるからです。
 ソフト面では、楽しいお買物のお手伝いができるように一店一店が魅力ある品揃えや感じの良い接客法の向上に努め、大型店のできないサービスをもっともっと身に付けるべきでしょう。それには「各店の自覚と意欲」、それと「商店会内の和」が不可欠。それが、今ほど必要なときはないと思います。


  鶴見川上流までモノレールを

主婦
 山火典子さん 
(綱島西1丁目在住)


 綱島の良い点は、まず交通の便がいいことです。横浜・東京・川崎・鶴見など殆どの所に乗り換えなしで30分以内に行けることです。つぎに街を改革するエネルギーがあることです。マンションがどんどん建って、新しい住民がいま増え続けていますが、古い温泉町というイメージを払拭していくそのエネルギーは凄いと思います。

 逆に良くない点は、静かな環境でないことです。とくに駅周辺は通りが狭いうえに、放置自転車でごちゃごちゃし安心して歩けないことです。

 鶴見川の河川敷を利用して鶴見駅から鶴見川上流までモノレールをつくること……これを私は提案します。
 このモノレールと東横線・横浜線・田園都市線とを結べば、綱島はさらに便利な街になります。一段と便利になれば自転車の利用者も少なくなり、駅前の自転車問題の解消にも役立つと思います。

 自然景観に恵まれた住民に
       欠けているもの

 学生
 中園ゆかりさん

 (横浜市立大
3年。21
歳。綱島東6丁目在住)


    恵まれた自然環境

 綱島には、鶴見川という生活に潤いを与える水辺の空間と綱島公園という季節によって色を変える木々豊かな緑の空間があり、東横沿線の他の街にくらべると、自然景観に恵まれているように思います。

  また、綱島はかつて「横浜の箱根」と呼ばれたほどの温泉街であり、その面影を今に伝える東京園の存在は、近年の新興住宅地とは異なり、綱島を歴史的に価値あるものにしているように見えます。

        住民意識の欠如

 綱島駅前周辺が、自転車駐輪禁止指定区域に指定されても、放置自転車の数は一向に減らない(当初は大分減ったが、すぐ以前と同じ状態に戻ってしまった)し、近年水質が向上してきた鶴見川に平然とゴミを捨てるといった行為から窺えるように、「我々の街を美しく、住み良い伝統ある街にしよう」という積極的意欲が、綱島の住民には全体的に欠けているように思えます。そのため、上記の綱島の魅力も、充分に生かされていないように見受けられます。

         街づくりへの参加意欲を…

 ハード面改善の第一は、放置自転車の一掃をすべきだと思います。放置自転車は街の景観を損ねるし、緊急事態が発生したとき救急車や消防車の通行を妨げる。
  また、目の不自由な方たちにとっても大きな障害物になりますから。

 第二は、ショッピングプロムナード化もよいが、そうした生活機能の充実だけではなく、買物帰りの人がくつろげるような憩いの場を、鶴見川の水辺の景観を利用して造るのも良いと思います。

 第三は、あの東京園には多くのお年寄りが集まることから、綱島公園へ向かう急な上り坂に「手すり」をつけ、お年寄りが室内だけではなく屋外でも交流が深められるようにしたら良いでしょう。


 ソフト面では、綱島の住民一人一人に「今後の街づくりを担ってゆくのは、住民である我々なのだ」ということを意識させ、横浜市や港北区といった役所に任せっきりではなく、積極的に綱島の街づくりに介入しようという意欲を高めることが必要だと思います。

         取材・文:岩田忠利














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